第十六章 ――安心。

第七十六回 心配ないからね。


 ――そう自分に言い聞かせる。それが、やがて確信に変わってゆく。



 いつか聞いたその声。僕を人質にしても……まったく問題はないの。少なくとも、この人は、僕に危害を加えるつもりはないと思えた。この人の目的は、僕ではないから。


 ……歩く。震えていた両方の脚も、落ち着きをみせていた。


 僕は信じる。自分の記憶……

 そして入る。この人が望む通りに、ランバルさんのいる医務室へと……



「おお、マシューじゃないか。お前は大丈夫だったのか」


「ランバル大佐、オルティアが捕まった。俺を逃がそうとして……俺だけが」


「そうか、よく来てくれた。

 ……ところでもう、その子を離してもいいだろ。我々が無事に、この研究所内に侵入できるように、シャーロックスターシャ・ルイーズベルモット・エッフェルエンペラー・シャルル・ド・二十六世様が、良き計らいをして下さったのだ」


「ランバル大佐、シャルロットでいいですよ。ここでは一研究員ですから。それに……

 この子の前では口外法度。この子もしょうと同じ、四季折々のパイロットだからな」

 との、一連の会話……



 凡その察しはつく。シャルロットさんはランバルさん側のスパイだったのだ。今となってはもう、敵ではなく……少なくとも敵ではなくなった。


 同じ志を持つ、強い味方となっていた。チーム・セゾンに、最強の指揮官が加入する運びとなっていたのだ。ランバルさんを、指揮官として受け入れたの。そしてこの人……


 マシューさんもまた受け入れるのだ。チーム・セゾンの一員にと。そして僕は、


「助けに行きましょ、僕らと一緒にオルティアさんを。

 ……そのためにはマシューさん、僕らと一緒に四季折々に乗ってくれますね?」



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