第十七章 ――加入。

第八十一回 ザ・ビーストだ。


 ――それは、野性味あふれる変化。鼓動の速さを感じる、大いなる変化。



 心と体に多大な影響を及ぼすエンペラー。四季折々のエンペラーは、その都度、その形態を変えてゆく。ここからは、まるでゴリラのような趣に。パワー系な趣に……


 響くタンブリング。ゴリラの象徴。


 五つの目の下には、大きなお口に鋭い牙。先程までの女性みたいにスマートなフォルムとは一変して、ガッチリした体格へと。それとマッチしてなのか、しょうさんの表情にも現れる。今にも翔さんが立ちあがって「ガルルルル!」と雄叫びを挙げながら、タンブリングしそうな勢いだ。そして変化した巨体は飛び上がり、リアルに敵に襲い掛かった。


 目の前の『ミラクルな薔薇』は、

 ……その美しい名前とは裏腹に、肉弾戦を繰り広げていた。



 ――ビースト化。今のエンペラーにはピッタリな表現。僕の繰り広げる執筆も、野性味あふれる激戦となってゆくのは必至。薙刀は勿論ビームでできているので、鋼も溶かす勢い。ビースト化したとはいえども、お腹から背中までの貫通痕は残っている……血液ともいえる体液は、まだ滲み出ている。そのダメージは、パイロットに影響しているのだろうか? といえば、少なくともこに機体には、それがあるようだ。見ていられない程……


 苦痛に歪む翔さんの顔、


「俺はまだ、やれる」と、止める僕を制する。すると可奈かなは「翔さん、皆一緒だから。喩え見守ることしかできなくても、翔さんと同じ思い。梨花りかも私も……」と、言うのだ。


「お前ら……

 悪いな、俺が半人前で、足引っ張ってるよな」


「ううん、もっと頼って。私も。三人で色んな修羅場を潜り抜けてきた仲じゃないの」


 刺さる可奈の言葉。


 込み上げる感情は、翔さんを強くしたようだ。涙の中にも、パワーを感じたの。



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