第一〇三回 また会う日まで。
――時は大晦日。十二月も末日。様々なイベントが、この空の下で行われている。
そしてこうしている間にも、エンペラーのエネルギーは消耗していく……時間よ、止まれと、
……切なさも含まれる、束の間の再会。
機体がこの状態を維持できるのも僅か。タイムリミットも迫る……微笑む、翔さんのお母さん。白い光に包まれながら……少しでも、もう少しでも、時間の流れが緩やかになるよう願っている。翔さんの様子を窺う僕らも、きっと同じ思いになって……
喋ることのできない翔さんのお母さん。見守る中でも喋らないのではなく、喋ることができないのだと気付く……もどかしいほど言葉が交わせずに、翔さんの気持ちを察するところ。翔さんはグッと堪えながら……
「必ず俺が、お母さんを元の姿に戻してやる。……それまで、待っててくれ。いつの日かとは言わない、来年は必ずお父さんと三人で暮らそうね、お母さん……」
それが精一杯の言葉。翔さんは号泣の域に達していた。僕も
温もりを知ることも、近づくことさえも、ままならない状況。憤りさえをも感じる様子の
何もしてあげられないこと、何もできず見守ることしかできなくて、そのまま見送ることとなった。……五千七百メートルの翔さんのお母さんが宇宙に旅立つのを。そこはきっと孤独で、冷たくて、でもそれしか……選択肢がなくて、地上の人々に迷惑かけるからって。心の言葉が痛く染みるから。僕らも去る、上空から地上に向かうために。
泣き声籠るコクピットの中で、それでもその涙は、新年迎える頃には決意に代わる。翔さんだけではないの。僕ら皆が、翔さんと同じ思いだから。
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