第一〇二回 必殺の疾風の舞。


 ――ただ、立ちはだかっているだけ。それも雲を突き抜けた、青く広がる大空に。


 そもそも目的は何なのだろうか?

 女神とも、天使とも解釈できるその容姿……



 美しくも面影……


 そこに何を見るのだろうか? 見れば見る程……その面影は衝撃を与えた。あまりにも充分すぎるほど。そして「お母さん」と、しょうさんにその言葉を出させた。


 ――お母さん。


 五千七百メートルの巨体。……異星人なのだろうか? 違う? このパラレルな世界での時空の歪みが、お母さんをこの姿にしたそうなの。……静寂の中、そう旧号きゅうごうは語る。


 すまなかった。そう詫びる。


 それは旧号を伝った、旧一もとかずおじちゃんの言葉。十五歳、屋上から飛び降りた最中に起きたことだ。彼の世界観が崩れるとともに、このパラレルな世界に歪みが生じたそうだ。


 時空の波に呑まれ……

 ボヘミアン組合とチームセゾンの、当時のメンバーたちは、その波に溺れていった。


 生死不明とされていた。或いは人の姿をしていないのかも。……そもそも何で、このパラレルな世界が誕生したのか? それは高度成長期が齎した環境汚染もその原因とも成り得るけど、心の傷……当時は社会的にも深く掘り下げられていなかった『いじめ』の問題もそのうちの一つ……ううん、七割以上を占めていると思われる。敵は、きっと姿形を変えている。人の心の魔が、その正体なのだから……でも、人には道徳が備わっている。


 そのメッセージが……

 きっと、この世界の主観となる旧一おじちゃんの心が伝わるなら、戦いは終わるの。


 翔さんの涙も、感動の再会に変えられるのも……


 きっとその時なのだと。その前に今は、驚きに包まれている。本人も含め、誰もが驚きに包まれている。思わぬ母と娘の再会……それも、この様な形で。言葉は奪われ……




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