第五十回 イカロスの翼の様。


 ――舞い散る白い羽が、それを物語っていた。



 突然で、あまりにも突発的なことで、何が起きたのか? そのことさえもわからないまま……重力に翻弄されたまま、僕らの機体の高度は下がる急速に、墜落するの、ヒラヒラと。人はその辺りで大体は気絶するのだけど、僕は大いなる衝撃も水飛沫も……



 暗闇の中へ。そこは深海に繋がる入口?


 ……ゴボッ。ゴボボボ……このまま死んじゃうみたい。


 …………


 ……ゲボッ。


 パシューッ。開く扉? 白い世界へと? 死ぬかと思うほど、息苦しかった。……入るものは酸素。ごく普通の空気。ヒンヤリと水……僕の体を濡らしているというのか、その水の中へと使っていた。生まれたままの姿で……と、いうことは、研究所? 目の当たりにはせつとシャルロットさん、それに千佳ちかがいた。涙をいっぱい貯めながら、近い顔。


梨花りか、良かった……

 死んだら、承知しないんだから」と、千佳は溜めていた涙も零れていた。


 千佳の涙に僕も……釣られて。次第に広がる視野に、僕のも含めて治癒用の、三体のカプセル。そこにはランバルさんの姿も……って、えっ? これって見事に敵に、潜入を許しているじゃない。そう思いながら、摂の顔を見ると……目の訴えは言葉を越えて、


「今のランバルさんは敵じゃないの。一人のお父さんとしてここにいるの。

 ……実は、しょうさんと血の繋がった、本当のお父さんだったの。ランバルさん……」


 言葉をも発しないで、じっと見る、翔さんが眠っているカプセル。その前で立ち尽くしている。僕も思う、目覚めてほしいと願う。翔さんと、そして可奈かなも。二人ともまだ、深海のように深い眠りの中。……しかしながら、誰が僕らを助けたのだろう? と、思っていたら、そこに見知らぬ人物が。スーッと視野の中に入っていた。気配もなく……

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