第二十九章 ――新章。

第一四一回 想い出は舞う桜。


 ――少し未来のお話。それは募る想いを綴ってきた学習帳。



 白くなったお空から、舞い散る雪……


 それは想い深き故に、深々と、白い世界を創り上げるも儚く、いつしか、薄桃色に変化していた。四季折々を飾るロボット小説は、しっかりとその軌跡を残していたの。


 世界の平和を守る物語は、

 実は、真の友情を描いた物語。環境も、性格も真逆で、衝突する中で喧嘩する中で次第に、戦うこと以外、何も知らない少女が、友情を知ってゆく物語……だったのだ。


 あの日、旧号きゅうごうが僕に伝えたかったこと、


 それは、それこそが、この物語だった。


 しょうさんの生き様に、そのテーマは隠されていた。この物語の事実上の主人公は、やはり翔さんなのだ。……なら、物語は終わったの? 僕は、まだ筆を握っているから。



 ……でも、筆は進まない。

 泣いてばかりの毎日なの。そんなに強くないの、僕は……


 するとある時、思い切り引っ叩かれた。涙の向こうには千佳ちかがいた。千佳は初めて僕を叩いた。僕よりもきっと痛そうな顔をしながら、今にも泣きそうな顔をして……


「いつまでそうしてるの? いつまで悲劇のヒロインを演じてるの?

 いつだったか、梨花りかは僕に同じこと言ったけど、ソックリそのまま返すよ。動かなきゃ何も始まらないよ、ほら行こっ、このまま何も食べなかったら、どうかなっちゃうよ」


 と、グイグイと僕の手を引っ張る。

 まるで千佳とは思えない程の力で、強い力で引っ張られる。


 そこは近くて遠い場所……それでも何だか、


 不思議な力に引っ張られるような、そんな感じ。モノクロだった景色も色づき始めてきたの。日常と呼ばれていた頃の色に戻ってくるような感覚だ。二人、走る電車の中で。



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