第六十七回 遠慮はなしなの。


 ――ホッとした部分がある。今この時に、出撃することがなくて。



 ランバルさんは、まだ眠ったまま。

 しょうさんは、まだ戦える状態ではないの……だから、


 僕は祈るように、出撃がないようにと、心の中で願うの。そして僕は、そっと翔さんの横に身を置く。ランバルさんが眠るカプセルの前に、翔さんと並んで座った。


 瞬間、翔さんは僕を見た。

 僕もまた、翔さんを見る……その時だ。耳を疑ったから、出撃の合図……


「翔さんは、行かないよ」


梨花りか、嘗めてんじゃないぞ。戦いってのはな、そんな甘くないんだ」


「あんまりじゃない……

 翔さんの心、ボロボロになっちゃうじゃないか」


「泣くな、梨花。

 お前は俺を、そんな軟だと思ってるのか? とんだ見込み違いだろ?」


「だって……」


「お前は甘ちゃん。俺は辛口だから……それでいいんだ。お前がいたら、俺の心はボロボロにならないよ。俺はな、お前を信じてるんだ。何があろうと、お前になら……」



 ――目が開いた!


 カプセルの中のランバルさん。


「それにさ、俺だけがここに残ったら、お父さんに怒られるからな。『仲間を戦陣に出しといて、お前はいったい何をしてるんだ』ってね」と、言いながら、翔さんの顔に生気が……錆びていた瞳にも、光が蘇っていた。いつもの翔さんの目に戻っていたのだ。


 ここはまだ集中治療室だけど、皆が集う――可奈かなも、シャルロットさんも。そしてここから始まる、絆が深まる僕らの物語。戦争は嫌いだから、そのための出撃だから。



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