第五章 ――合体。

第二十一回 呼吸が大事なの。


 ――それは二人の呼吸と、正義を貫くという強き一念。



 すると、高鳴る鼓動を感じるの。……それは機体から。興奮止まないほどに。


 分かち合う? ううん、もっと親密。僕の身体も共鳴して熱くなるの。そして光るコクピットのゲージ。それが何を意味するのかは、まだ知らされてもいないけれど、


「わっ!」という、僕の叫びと同時に、バリバリバリと機械音を立てながら大空高く飛び上がる機体。――それはもう有り得ない高さ。限界高度の五百メートルも超え。


 そして呼吸ピッタリに、可奈かなが搭乗している機体も大空駆け巡るの。大きく、白い翼を広げながら。天使のような翼。それはその時に、初めて現れたものだ。



 それは、もしかしたら合体なの?


 ううん、紛れもなく間違いもなく合体準備のための変形。凹凸を嚙合わせる自然の摂理のように、体内に電流が走ったかのような感覚の中、合体をした……そうなの。


 どの様に合体したのかは、僕らからは見ることも、確認することもできないけど、その姿を知ることになる。それは澄み渡る海……澄み渡る海が鏡のように、


 ――映したの。

 一号機と二号機が合体した、四季折々のその姿を。


 そして合体したなら、大空を飛ぶことができるの。大きな翼を羽搏かしているの。


 それはそれは天使ともいえるその姿。合体することによって、一つ目も三つ目に。一号機の目は一つだけど、二号機の目は二つ……単純計算。そして装甲の殆どが外れて、でも必要最小限には覆っていたの。機動性を重視したためと思われるから。


「そのための、翼なんだから」と、可奈は言う。合体した姿を発案したのは可奈で、どうも飛べることが特徴のようだ。それにしても重厚感は皆無の、何て可愛らしい姿で、


 ――本当に天使のような趣なの。


 シャガイも甲板の上で見上げる程だ。右腕にギミックがあるって……大きな注射器?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る