第二十五回 彷徨える自由人。


 ――「ジプシーの異名」と名乗りを上げながらも、彷徨えるその心たち。



 警報音が響く、この研究所。


 休むことなく、次なるシャガイが現る。甲板の上に……複数。三体も躍り出た。そこからの、考えなくても緊急出動。スクランブル、スクランブル……と、弾む心たち。


 それは僕ら。


 戦うことが好きではなく、戦うことが大嫌いな、そんな僕らが心弾んでいる? それは救護。救う道。戦いの目的を変えることによって、僕らの胸は次第に熱くなるの。


 迎え撃つ、僕らが乗り込む機体、四季折々……

 颯爽たる合体の、聳え立つその姿は、紛れのない天使の微笑み。



 病気に立ち向かう看護の姿。それがモチーフとなった、この姿。――しかし、爆音が轟き渡る。奏でるという表現ではなく、炸裂するミサイルポットからの着弾。大空舞う青と黄色の機体が放ったもの。それは……僕らを巻き込んだ。それなりのダメージを受ける僕らの機体。でも、三体のシャガイは無症状。ダメージがないのだ。


 ――それで襲い掛かる。


 攻撃した者が標的とされる。放つ体液。目からビームのように。翼に……ウイングに命中する青と黄色の機体。飛行形態の『ジプシーの異名』が、急降下する。まるで墜落するように。でも衝撃に備える――可変する。ロボット形態に。つまりは人型になる。


 その機体には、

 言うまでもなく葛城かつらぎさんが乗っている。葛城さん専用機だから。


 振り翳すブレイド。ビームブレイドと、名前が存在する。そして放たれる言葉。


「おい甘ちゃん、手出すなよ。こいつらは俺の、獲物なんだからよ」――と。衝撃なものだった。僕が『ボクッ娘』なら、葛城さんは『オレッ娘』で、上には上がいるの。


 ……上には上がいる。その言葉は、この戦いに大いなる危機を呼ぶことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る