第六章 ――対峙。

第二十六回 予想と違うこと。


 ――それは起こった! 今この時この瞬間、目の前で。



 有り得ないことが起きたのだ。葛城かつらぎさんが搭乗している機体、青と黄色の『ジプシーの異名』が、破壊されてゆく……まるで、とある量産型のように、意図も簡単に。


 引き千切られる右腕。左脚までも宙を舞う。


 鋭く長い爪は、腹部を貫いている……藻掻くその様子は、断末魔とも思える。


 僕らに救う術はない。我が機体の『四季折々』は、先程の葛城さんの機体から放たれたミサイルポット攻撃を受けて、動かなくなってしまったのだ。でも妙だ? 三体のシャガイは、僕らへの攻撃はせずに、葛城さんの機体ばかりを攻撃……もはや破壊だ。



 大破にまで至っている。


 ついには頭部も、宙を舞った。夥しい程のオイルも流れていた。


 声を掛け続けていたの、何度も葛城さんに……でも、返事はなかった。まるで、そこから消えたように。三体のシャガイが海へと、姿を消した時には、機体は、葛城さんの機体は大破を通り越して、スクラップ状態。再起できない程にまで破壊されていた。


 回収されるも……


 もう、その頃には生命維持装置の中。そのカプセルの中で葛城さんは眠っていた。


 人体を保っているのも不思議な程の、機体の損傷。傷痕だらけの身体だけど、生命は無事に保っている。僕は、葛城さんの姿を見るのは初めてだった。目覚めたなら、きっと初対面となる。葛城しょう……それが彼女のフルネームだ。身長は僕より十五センチも高くて色白。髪も長い。僕と違って、しっかりとした女性のフォルム。年齢は、まだ十六歳。


 そう思うと、泣けてくるの。


 思っていたよりも幼い年齢。僕と一つしか違わない。でも、重すぎるの。背負っているものが……何で? どう見ても普通の女の子と変わらないのに、葛城さんだけが?


 僕は看取るの。可奈かなと一緒に、カプセルの中で眠り続けている裸の葛城さんを。



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