第二十二章 ――旋風。

第一〇六回 風のような動き。


 ――それは、満喫した後。きっと、しょうさんにとっては初めてのこと。



 家族団欒の、元旦の一時……


 お雑煮も含めて……と、そう言っていた。その後は凧揚げに駒回しなのだけど、その光景を見たことがなく、お母さんから聞いた小話にだけ存在するの。お正月の歴史は聞くことにより、イメージが膨らむ。それは脳内の世界で、しっかりと生きているの。


 お祖母ちゃんから受け継がれるお母さんの世代……


 その出来事を、僕らは知らない。駒回しの紐だって上手に巻けないから。ましてやベーゴマは、もう一つ難しい。今は射出装置の役割を果たす道具を用いるなら、僕でもできるの。でも翔さんは、果敢に紐で巻くことに挑戦していた、何度も何度もやり直しながら。


「お祖母ちゃん、楽しいね」


 と、言いながら。その表情には笑みが……


 きっと翔さんにとっては、何もかもが初めてのことで新鮮……或いは幼き日に、お母さんと一緒だった頃を思い出しているのだろうか? 戦いもまだ、植えつけられる前の遠い日々に。そして初めて見る翔さんの表情……童心に帰る、その様な表情だ……


 何だか僕まで嬉しくなって、


「翔さん、勝負だよ」と、もちろんベーゴマ。


「勝負の前にお前、まだ紐が負けてないじゃないか。ほらほら貸してみな。それとこれ持っとけ。巻くの大変だったんだからな、絶対崩すんじゃねえぞ」


 と言って、翔さんは僕のベーゴマに紐を巻いてくれる。僕はその姿を見ながら、


「ホントお前って不器用だな」と、文句を言われたから、


「じゃあ、お目にかけましょうか、僕のバンプラ・コレクション。それを見て、まだ僕のことを不器用と言えるのか、どの様な顔するんだろうね、翔さん」


 と、ついつい反論してしまう。すると、翔さんはクスッと笑いもって、


「そりゃ楽しみだな。是非とも見せてもらおうじゃないか」と、そう言うのだった……



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