第一〇五回 新年の訪問者は。
――一富士二鷹三茄子。
それは今宵の初夢。そんな風を運んでくるような瞳をした訪問者が今、目の前に立っている。この場所は、僕のお家の前。靡く長い黒髪に黄色のジャンバー、青いスカート。
珍しくスカートなの。普段が……男勝りだから。しかも一人称が『俺』
「
……そう、訪問者は翔さんだった。初めて僕のお家を訪ねに来られた。でも、何だか今日の翔さんが、いつもとは趣が違う。しおらしくというのか……女の子だけど、女の子っぽくなったっていうか。綺麗という単語が胸いっぱいに広がる中に於いても……
「あっ、ああ、あけおめ。今年もよろしくな。
……ってお前、あまりジロジロ見るなよ。結構ハズいんだぞ、この格好」
心なしか潤んだ瞳に、ほんのり赤い顔……
「寄ってく? 僕のお家。何かお話でもあるのかな?」
「特にはないのかな。……ただ、お父さんが行けって言うから、お前ん家。地図まで持たしてな。何でも社会勉強だって、それしか言わないから。何か心当たりないか?」
……考えるも、それはどうかは解らないけど、
「じゃあ尚更だね。僕のお家に入りなよ。一緒に元旦を満喫しよ」と、言ったの。
ちょうど今は、雪がちらつく……
見えるカントリーロード。寒波の影響で冷たい風。刺々しい寒さ……
「ありがとな、
翔さんとともに、玄関を潜る。温かいお家の中、凍える身体も解れる様子。
「翔さん、一緒にお昼しよ」と、言ったのだ。
「遠慮はいらないよ、是非そうしなされ」と、お祖母ちゃんも翔さんに声を掛けたのだ。
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