第七章 ――解放。

第三十一回 解き放つことだ。


 ――そう、それは解き放つこと。能力もそうだけど、何よりも募る想い。



 恋人のことを想う心とよく似た、白色と青色の……そして薔薇色の間に。僕と可奈かなはその関係にある。それが四季折々の能力を解き放つキッカケなら、少し異なると思われる。


 平和を願う心。


 その想いを執筆に託す。それこそが、解き放つことだ。

 

そして翔さんの、心の中の燻る想いを解き放った姿が、


「俺に、教えてくれないか?」という言葉だった。――何を教えるのかは、訊かなかったの。心で汲み取ったから、その想い。そして答えるべく、僕は言う。言葉にして。



「いいよ」と、その一言を。


 ありきたりな言葉だけど、それが一番にマッチしている。


「……でも、まずはしょうさんの体が良くなってから。戦えない体……とは言ったけど、それは救護できる体になるという意味だよ。救護と言う言葉を、第一に考えることこそがね」


 ――僕が君に教えてあげられること。

 

でも僕は甘ちゃんだから……「僕以上に、翔さんに教えてもらうこと沢山だね」


「と、いうことはお前、

 ……俺と組んでくれるのか? 俺は、お前のように甘ちゃんにはなれないぞ?」


「だからなの。翔さんは厳しくも、

 ……とっても優しい人だから。僕よりも何十倍も、ううん、もっともっと……」


 きっと、誰よりも優しい人なのだと思う。


 そして、一番に平和を望む人とも思える。


 その想いを、執筆に託す。四季折々の原動力は執筆なのだから。それ以上のもの。いずれは共存への道へ。……可奈は言う。「翔さん、私はいつでも交代できるからね」


 こうして二号機に、翔さんが搭乗する日も、確実にカウントダウンに入ったの。



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