第一二〇回 御堂筋に吠える。


 ――明るくなるお空、暗闇は薄っすらと淡い紺色に化けて、三日月が浮かぶ。



 眠りも忘れたまま、この時を迎えていた。


 僕も千佳ちかも、それからしょうさんも……それでも、今日は平日、学園の授業はありの上に登校もする。神経は張り詰めたまま、眠気も起きずで、結局一睡もできなかった。


 学園へ行くのも億劫だけれども、


 本当は行くのも嫌々だけれども、並んで歩いている。僕と千佳、それから翔さん、三人並んで。思えば珍しい光景で、翔さんはいつもシャルロットさんと一緒に、僕らよりも早めに登校しており、僕と千佳と可奈かなとの三人が、いつもの三人……なので、今日は異色の三人とも言えるの。氷雨……細い雨がシトシトと、冬の調べを奏でる。



 そのメロディに溺れそうだから、


「翔さん、その……」と、声を掛けるキッカケを得た。


「どうした? 梨花」と、声を掛けてくれたから普通に。普通が何か知らないまま、僕は描く。リフレッシュのため、それが何を意味するのかは他言無用……


 題して『カラフル』


 それに『カップル』とも。モノトーンとは表裏の関係。だから必要と思えるの、ネガティブな発想が心に纏わりつく今、ポジティブな発想に変えるための行動。一筋縄にはいかないけども、心に纏わりつくものを排除する働きは必要と思う……



「今日は、学園に行かない。このまま電車に運ばれるよ」


「梨花?」「おいおい、サボるのかよ?」と、千佳と翔さんは驚くけれども、「そんな時化た顔で学園行ってもつまらないだけだよ。今日だけは悪い子を出すの、ガス抜き」

 と、僕は厳として言った。……心境的には、雨の御堂筋がお似合いだと思うから。


 この私鉄沿線の終点から、御堂筋に乗り換え……歩くの、三人並んで行進のため。



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