第二十五章 ――来夢来人。

第一二一回 語らう戦友たち。


 ――急な学園もの的な展開となるけど、僕らは元々、現実な世界では学生だから。


 戦闘のない時は、やはり普通の学生……

 やっぱり普通の女の子。いつも男勝りなしょうさんだけど、普通の女の子だった……


 パラレルな世界での出来事は、現実リアルな世界でも引き摺っている。それ程に衝撃的な内容だったから、夢物語とか小説の内容とかでは済まないお話だから。ましてや、やっと再会できた身内、母親がらみのことだから、涙が出る程に大きな出来事だったの。


 そのことを、僕は目の当たりにしたから、


 少なくとも、事の重大さは心得ているつもりだ。千佳だって同じだと思うの、僕と。翔さんを何とか励ましてあげたいと思い、咄嗟にアクションしたミッションだ。


 行き当たりばったりの、思い付きだけれども、何も行動を起こさないより遥かにマシだから……そう心を固める狭間に、千佳ちかは僕を見てアイコンタクト。瞳は時として口よりもお喋り。思いの丈が重々と入り込んでくる。今の御堂筋は、その象徴ともいえる。三人歩く赤、青、黄色の傘を差しながらその舗道を。途中下車による『梅田』という駅を少しばかり越えた場所。傘はカラフルだけど、お空はモノクロに等しく重厚感が漂う……


 それにも負けないようにと、


 演じる能天気。ついに声にしてみる。――「さあ、何処に行く? 翔さん次第だよ」


 すると、翔さんはフッと息を吐くと、――「お前に任せる。……ありがとな、梨花りか


 そう穏やかな表情で言うの。

 すると、するとだよ……ヤバッ、涙出そうになったの。


「なっ、何? 急にそんな、何か調子狂うよ。翔さんがしおらしくなったらロクな事ないんだから。ダメダメそんなの、自己中でKY、それが翔さんなんだから、翔さんが決めてよ、何処行きたいか」……照れ隠しのつもりだった。でも、でもね……


「おいおい梨花、人のこと自己中でKYって、気にしてること散々言いやがったくせに何泣いてんだよ? お、おうよ、じゃあ俺について来いよ、文句たれても知らねーからな」


 と言う翔さんの目に、キラリと涙が光っていた。そして兎に角、とにかく歩む……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る