第一二二回 光あらば影あり。


 ――雨は、いつしか霧状に。そしてモノクロなお空も色づき始めたの。



 晴れ間が見える。日光が照らすことにより、生じることがある。……それは影。僕たち三人に纏わりつく。歩む中でも追いかけてくるの。しかも切っても切れない縁だから。


 同じなの、光と影の関係……


 今歩む現実な世界と、その因となったパラレルな世界……

 見事に証明している。『現実は小説よりも奇なり』と……


 しょうさんの歩調が少し変わる。重かった足取りが、少し気にかかる程度かもしれないけれど、軽くなったような気がするの。そして感じる。横から見上げる翔さんの顔にも、色を感じたの。目の色が、いつもの翔さんに戻ってきている。難しいことを考える前に、突っ走っているいつもの目の色。それは、ある種の復活をも意味しているように思えた。



 ――辿り着いた先、そこは一軒のラーメン屋。


「入るぞ。俺の奢りだから、遠慮なしに食えよ」


 と、翔さんは僕らを招く、カウンター席で横並びに座ると、そこの店主と思われる人が近づいてきて……「おう、翔ちゃんじゃないか、今日は学校じゃないのか? さてはサボりか? まあ、青春には色々あるってもんよ」と、やたらテンションが高く、僕と千佳ちかは少し……ちょっぴり引き気味。だけど、「まあ、サボりはサボりだけど今日は特別……って、おいおい、それじゃ俺がまるでやんちゃみたいじゃないか」という具合に、翔さんも負けてはいない。そして思い知らされるような感じ。翔さんのタフさに脱帽で……


「違うのか?」


「違う。どう見ても俺は品行方正。それ以外の何ものでもないから」


 との、やり取りに、思わずクスッ……と、笑いを堪え切れなくなってしまって、


「おい梨花りか、何笑ってんだよ?」「品行方正……ね」と、更にツボにハマる。で、翔さんは「こいつだよ、こいつ、この度のサボりの黒幕というか、主犯は」と、指をさした。



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