第六十三回 蠢く不安と組織。


 ――それは屡々感じていたけど、漠然として具体性のないものだった。



 これまでは、それで済んでいた。


 でも、まるで下半期の決算時期と同じようなノリで戦いもまた、激しくなってきた。


 思えばシャガイ救済のお話よりも、ランバルさんが攻めてくるケースが、その場数を増してきた。回を重ねる度に、レベルアップしてくる機体。いつも強敵となり得るのだ。


 前回の『黒き立党精神の童夢』


 キッカー君がいなかったら、僕らは今こうして……


 あの場面が脳内を支配する度に、脚がガクガク震えている。でも、その中で薄々とだけど、同時に思うことまで芽生えてきた。それは何か? 消えそうになることもあるのだけど、ランバルさんは何故、執拗に翔さんに戦いを挑むのか? 二人が親子だということが明らかになった上でも何故、二人は戦わなければならないのか? それも……親子で。


 一歩間違えたら、死ぬんだよ?


 それでもしょうさんは……


「戦うことでしか、俺たち親子は語り合えないんだよ。……って、何だその顔は? 変な同情なら有難迷惑だけど、お前らを巻き込んじまって、悪いとは思ってるよ……」


「思わなくていい。

 翔さんが巻き込んだのが、僕らで良かったから……」


「その……怒ってるのか?」


「いつか言ったよね? 僕のこと水臭いって。今の翔さんになら、その言葉、そっくりそのまま返せるよ。僕ら以外に誰が、翔さんについていこうと思うの? 自己中でKYなのに、そんな水臭い言葉なんて、似合わないよ。僕ら三人、仲間以上じゃない……」


「……梨花りか、いつになく熱いじゃないか」


 それは――


 翔さんが何か、僕らに隠してることがあるんじゃないの? ランバルさんのことで。



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