第一四八回 操るメカは善玉。


 ――それが、僕としょうさんが搭乗しているロボットの名前。因みに僕が名付けた。



 全高は三・五メートルと小柄だけど、喩えるなら戦車。または装甲車ともいえる趣。操縦席は二人分。斜め下に翔さんが座り斜め上に僕が座る。まさか今日、この日にロボットに搭乗するなんて思ってもいなかったから、僕は春先仕様の薄紅色のワンピース。



 いつもとは趣の異なる服装だから……


 別にパンツを見てほしいとか思ってもなくて、今は三十体もの暴走しているロボットを食い止めることで精一杯で、格好なんて気にしていられなかった。それは翔さんも百も承知で、突然のことだったから、僕がパニックになってないか案じての言動だった。


 それは、もう解っているの。


 解った上でお互い、逃げ惑う観客を守るため、暴走ロボットを食い止めている。どう食い止めているのかというと、頭部にある刀型の飾りを破壊している。それで動きが止まると、可奈かなは言っていた。……破損は必要最小限。ロボットたちが暴走した原因として考えられるのは、汚染。つまりはウイルスによるものだ。そのウイルスは人ではなく機械に感染するもの。何処から感染するのか? それは刀型の飾りからと可奈は言う……



 刀型の飾り……


 僕はてっきり階級を示す飾りと思っていた。でもそれはアンテナだった。その名もブレードアンテナという名前だそうだ。名前といえば、その機体。暴走している三十体のロボとの名前は悪玉……ではなく、球玉……という名前。


 ブレードアンテナを破壊されたのなら、また新しいものと交換する。それで解決だ。一旦はモノアイが消えても、交換したなら、また灯るの。


 起動しているという証。迅速な対応のお陰で、被害は必要最小限に抑えられた。


 そう言われるのだ。この企画を実行した者たちから。管理者からも。



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