第八十八回 その射程の距離。


 ――それは、五十メートル。それ以上の距離を出そうものなら爆発するそうだ。



 なので、未だ正確な距離は計測されていない。ロケットのように飛び出すパンチも、目から放つレーザービームも。……ハッとなった。思えばこの五十メートルが限度の射程距離は、この二点のみなのだ。その間に一キロ先まで聞こえる聴力のことに触れたから、細やかな混乱が生じたのかもしれない。でも、……でも大丈夫。執筆を続けるのだ。


 以上、今わかっている限りの、旧号きゅうごうのチート能力。


 見た目はもう、旧一もとかずおじちゃんそのもの。ロボット感がなく、人間と見分けがつかないほど精巧に造られている。このチート能力があるなんて、とても想像できない程……



 最近の変化の繰り返しによって、広くなったコクピット。外の景色も三百六十度わかるほどの透明感。空の上にいるような感じだ。そこに五人が顔を合せながら座るの。


 広くなった分、五人の距離が近づいたの。


 これなら一つの要塞も演じられる……と、そう思っていたら、


「できるよ、梨花りか」「へっ?」「このエンペラーは、基本形態のない機体だから」


 と、旧号の言ったその答え。理解するには程遠く、どう言葉を結んだら……


「じゃあ、お目にかけよう。エンペラーの最大の特徴」


 と、旧号が言った途端、コクピットは五つに分かれ、座席はスピードに乗って、そのまま後方に走る。暫しのお別れという具合に、エンペラーは……な、なんと分解?


「おいおいおいおい……」


 と、響くしょうさんの狼狽える声。「な、何が起こるの?」と、可奈かなも同様。千佳ちかに関しては冷静……そのもの。初めから知っていた? というわけでは決してなさそう。知らなくても、喩え根拠がなくても、旧号に絶対的な信頼を置いている。まるで親子のように。


 それが証拠に、千佳は言う。


「心配ないからね、ここからがエンペラーの性能だから、皆に知ってほしいの」と。



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