第一三五回 辿り着いたなら。


 ――雪割桜。その表現の似合う山脈。今そこに辿り着いて、


 そこで見たものは、巨大な物体? 直径千メートル超えの円。その周りに輪が。



 円の真ん中を、金色の天使の輪が覆うイメージ。……まるで土星のような形態。見た目は心を奪われる程、美しく神秘に溢れる趣。攻撃は、今の処してこない。まだまだ……


 まだまだ観察が必要。


 急く気持ちを抑える。それは僕だけではなく、皆も同様だ。


 その土星に似たもの、ロボットではないようだ。生物……? 地球上のものなのか、それさえも未確認。只々宙に浮いている。攻撃をしてくるとしたら、どのように攻撃してくるのかも見当つかずで、合体しないまま五体のマシーンは、その周りを飛んでいる。



 握る操縦桿……僕の場合は、千佳ちかの場合もだけど、


 キーボードによって操縦している。エンペラーのエネルギー源となる超電磁を、執筆により蓄える役目も兼ねている。ならば……『梨花りかの三号機と千佳の四号機は、エンペラーのエネルギー源発生装置のようなものだから、絶対守り抜けよ、可奈かな太郎たろう、そして旧号きゅうごうも』と、しょうさんは言うのだ。それを言うなら、『誰が欠けても駄目だから。翔さんだって合体した時は、もはやエンペラーの動力だから。皆が揃わないと勝てなよ』


 まだ、戦うと決まったわけではないけど、


 備えあれば患いなし……完璧には程遠くとも、できる限りの可能性を探しつつ、当て嵌めるしかない。『そうだ。梨花の言う通りだ、皆、心して円陣を組んだまま離れるなよ』


 と、旧号は言う。……今はそれしか方法がないようだ。


 電子頭脳、旧号は分析を続けている。その直径千メートルの土星に似た物体。宙に浮いたまま動きはなし。この状態を維持したまま、……三時間も経過する。長期戦となれば燃料の問題も深刻化する。一旦は引き上げた方が……と思った丁度その時だ。


 僕らは気付いていなかったのだ。動きはもう、あったのだ。大いなる見落としだ。

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