第一一四回 ……今、必殺の。


 ――その域に達するには、もう少しの時間を必要とする。しょうさんは思考の中へ。



 かわす相手の攻撃。太郎たろう君は只管、翔さんが導き出すのを待つ。それは僕も同じ。千佳ちかと一緒に勝利をイメージして執筆だ。少しでも翔さんの力になれたらと思いつつも。可奈かなは予測する、相手の動き……そこから分析する、相手の癖やパターンなど。


 旧号きゅうごうは黙って太郎君を窺っている。

 思えば皆が、翔さんの力になろうと行動している。これこそが異体同心。


 すると……


梨花りか、この間のベーゴマのこと、文章で再現できるか?」と、翔さんは問う。


 ――もちろん可能だ。その思いは行動となる。「任せて。翔さんとの元旦は、メモリーに刻んであるから。とってもビッグなハートだよ」と言いつつ、キーボードを弾く。


 繊細かつ大胆。矛盾はするものの、その矛盾をも呑み込めるような、そんな思いに達する。ベーゴマは、紐を巻くのが難しかったけれど……翔さんは、それを熟した。


 全くの素人とは言うけど、


 ……そうなのだ。ノリでやってしまったのだ。運も実力の内と言うけど、翔さんの青白く燃ゆるオーラ―は、その運をも味方につける。その扉は再び開いた、九十九の必殺技の扉は。ある意味、九十九の必殺技はエンペラーの切り札。同じく翔さんを始めとした僕らの切り札。……一体誰が、九十九の必殺技をエンペラーに仕込んだのか?


 それは旧号かと思いきや……実は異なるようなの。正しくは、九十九の必殺技を仕込んだのは旧号だけど、引き出すのは翔さんなのだ。ここで、驚くべきことがわかる。


 エンペラーは、翔さんと同調している。


 インプットが旧号なら、アウトプットは翔さんなのだ。そして引き出す超電磁の鞭、と思いきや、それは紐のようで、出現する巨大なベーゴマ。お腹から射出するのだ。それを超電磁の紐で受け止めながら巻きつける。そして投じてみるのだ。それはそれは磁石の性質を利用した技。反発の力でベーゴマを投じる。今、必殺の『超電磁ベーゴマ』なの。



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