第一一五回 蓄積する白い雪。


 ――それは想いの数々。募る想いは、またも蓄積され、雪の山脈を築き上げた。



 白銀の世界を背景に、雪の舞う中を回転しながら宙を舞う、ビッグサイズのベーゴマ。


 それもそのはず、エンペラーのお腹から射出されたものだから、通常のベーゴマよりかは何千倍に拡大したものとなっている。紐も特殊なもので、超電磁が走るワイヤーロープみたいなものを使用している。……突然のことなので、僕は詳細をあまり知らないの。


 恐らくしょうさんも一緒。あまり詳しくないけど、

 彼女にはノリで熟す力がある。あまり考えずに行動するタイプ? ……それも違う。どちらかといえば、体が先に反応する感ともいえる。そんなタイプと思われる。


 紐を巻き付けるのは、普通のベーゴマでも難しいけど……やはり、超電磁を駆使しても難しいことには変わりなく、多分、翔さんだからできたことに近い。ベーゴマに紐を巻き付けるその間も、『白雪』という名の機体の猛威は衰えることなく、容赦はない。五回ほど槍のフォーク型の先端が、背中やお尻、脚部に刺さっていたのだ。


 やはり無傷とはいかずに、肉は切らせていた。


 白銀の世界に舞うエンペラーの赤い液体……それは、熱い血潮にも思える。きっと翔さんの情熱と同調したのか、緑から赤に変わっているのかもしれない、エンペラーの体内を流れる体液ともいうのか、血液ともいうのか、もとはシャガイを改造したものだから。



 ――放たれたベーゴマは、紐による超電磁の反発によって、シュイ―ン! という効果音を高らかに響かせながら、有り得ない程の高速回転になり、まるでビームのように白雪のお腹を貫通した。見てわかるように大きな穴が開いた。その瞬間、白雪の首が切断された。どうやら頭部がコクピットで、脱出ポットを兼ねているようだ。


 その頭部は、中性の騎士のように仮面で覆われているような趣だけど、口元が割れ、何らかの発射口が現れたかと思うと、ビームを放った。そのビームは途轍もない速さで、エンペラーの肩を捉えた。そして白銀の大地に、左腕が脱落したのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る