第九十五回 運命を握る旧号。


 ――時は、静寂な場面を描いていた。



 残されたものは、残骸……

 廃墟となった連なるビルや、其々の建造物……


 執筆が止まったから。祭りの後の出来事みたい。そして微かに聞こえる風の調べ。その中に見える幼き日の……温かな光景が。パパとママの声が……


 千佳ちかも、僕と同じ光景を見ていることだろう。今はもう、それも知ることはできないけれど、瓦礫の下敷き……もう姿も形もないのだ。もはやここは、コクピット内ではないのだから。何が起きたのかは、もう永遠にラビリンスとなるのだ。


 一瞬の青白き光。


 何もかもを呑み込んでいったから。僕ももう、意識は朦朧としているの、すでに。

 すでに……身体はバラバラに。四季折々のエンペラーと同じようになっているの。


 腕は、遥か彼方に転がって……


 三体のロック・ガイとの、ぶつかり合いのその瞬間に起きたことだ。超電磁が暴走したとも考えられ、……何故なのかは、きっと執筆にあると思うの。エンペラーは僕らの執筆によって、エネルギー源の超電磁を蓄えるから。それを力の源としているから……


『頭の中が真っ白で、綴れないの。梨花りか、助けて……』


 その悲痛な叫びが、千佳の最期の言葉となった……


 僕は躍起になって、書き続けて、二人の呼吸が合わずに暴走を引き起こした。その結果なのだ。……エンペラーは、暴走の末に爆発したのだ。


 或いは時空の歪みをも誘ったのか? このパラレルな世界にも、多大な影響を与えたのかもしれない。現実の世界に比べ、このパラレルな世界の時の流れは迅速。しかしバランスを崩し、高速回転を生んだから、……これって、もしかしたら世界の崩壊なのかも。


 皆が皆、巻き込まれた。可奈かなしょうさんも、太郎たろう君も。そして、風に乗って声が……


「梨花、しっかりイメージして。千佳を蘇らせることができるかもしれないから」と。

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