第八十四回 パラレルな世界。


 ――それはまさしく、今僕らがいるこの世界を指していた。



 現実の世界と並行するこの世界……


 それが、千佳ちかが創り上げた世界……正確に述べるのなら、千佳が千佳になる前の、蘇った記憶が生んだ世界。ある日突然、無意識のうちに行き来することができていたの。


 僕は今まで、それを夢だと思っていた。


 でも違うの。厳として文章に残っている。小説サイトの『書くと読む』に、連載されているのだ。紛れもなく僕の名……僕のPNペンネームで。昨日だって、更新されていた。


 それを千佳が、読んでくれている。応援のハートマーク。千佳のPN……


「ほら、証拠は充分あるでしょ。……僕はね、最近わかったことだけれどね、この世界を救うことにあると思うんだ。おじちゃんが僕に託してくれた記憶。それに対して僕は何ができるの? と自問自答の毎日。その胸を述べることに、答えがあると思ったの。……でもね、僕だけじゃ無理なの。梨花りかと一緒でないと、この物語を伝えられないから」


 千佳は泣き出した……


 自分に託された世界なのに、自分一人じゃ何もできないと……


 争いのない未来。

 喩えるなら、四季折々が戦うロボットでなくしてあげられる世界へ……


 つまりは戦争のない世界。戦争に心を汚染されない世界、現実ではいじめのない世界へと、変えてゆける心を伝える物語へと、そのために僕らは戦う。人の持つ悪い心と……


 この世界で起きていることは、


 嫉妬……そして環境汚染をも。ボヘミアン組合の内部では、同じ組織にあっても、争いは繰り返されているのだ、今も。ランバルさんも、その渦中にある人物。しょうさんもまた被害者ともいえるのだ。究極は、翔さんのお母さんを救うことにある。この時空の間で彷徨える翔さんのお母さん。そこにすべての鍵があるの……と、千佳は、薄れそうになる記憶の糸をしっかりと、繋ぎ留めながら、僕に語ってくれたの。今の精一杯の記憶を……



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