第九十八回 振出ではなくて。


 ――そうなの。ただの振出ではない。振出に戻ったように見えるかもしれないけど。


 先程までの崩壊と蘇生が嘘のように、目の当たりにはロック・ガイが三体、そして対峙するエンペラー。でも、エンペラーは、もう新章を迎えていた。


 地より湧きたるその姿、聳え立つ巨体は、

 先程までのエンペラーではなく、開かれたエンペラーなのだ。そのエンペラーを創り上げたのは、六人の戦士たち。超時空で溶け合った身と心……スープ状になった六人の身と心は、強固たる絆を描いた。操縦者の六人の絆がパワーアップしているのだ。


 それを知らずか、襲い掛かるロック・ガイのアイアンクロー。

 だけど三体同時。……前方、右斜め、右後ろ。囲まれている。


 考えるのだ、対策を。そう思っていると、――「回るんだ、しょうさん」と、声が響く。


「なっ? お前、俺に命令するのか?」と、翔さんの声が次に響くが、


「ああ、そうだ。勝つためだ」と、ゾクッとするような眼差し。その声の主は太郎たろう君。


「わ、わかった」


 と、回るエンペラー。翔さんが反発することなく、エンペラーを回転させた。つまり今はスピンしている状態。そして「千佳ちか梨花りかお姉は楽しい執筆を」と、太郎君の声がこだまする。それだけで留まらず、「可奈かなお姉は次なる攻撃の準備を、サンダーボルトだ」


 驚きの連続だ。……太郎君は今日、初めてエンペラーに乗り込んだはず。しかも戦闘の経験もない初陣なのに、僕らも知らないエンペラーの攻撃を、まるでこれまで一緒に操縦していたかのように、しかも手足の如く扱えるように、僕らに指示したの。


 旧号きゅうごうは、うんうんと頷いているのも視界に入るなり、……どう表現したら良いのか戸惑うのだけれど、やはりリーダーの風格を感じざるにはいられないほど……


 超電磁を活用した電気嵐。『超電磁タイフーン』とでも名付けたら良いのか、実現した必殺技の域に達する新しい技。ロック・ガイの襲い掛かるアイアンクローは三体とも、その腕ごと爆破したのだ。エンペラーの回転停まる時、後退りする三体のロック・ガイ。


 三体ともアイアンクローの右腕を失っていた。そこで更なる攻撃を仕掛けるの……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る