第九十九回 九十九の必殺技。


 ――そのうちの一つということは、まだ見ぬ必殺技は、九十七もあるということ。


 先程の『超電磁タイフーン』が一つとしたら、只今繰り出そうとしている『腕・射出アタック』……つまりロケットのようにパンチが飛び出すことも、その一つ。


 思いの外、最強の技……


 超電磁の力も加わって、敵の胴体を貫通させる威力。身長五十七メートルを誇るエンペラーから射出されるパンチが、超電磁砲に乗って飛んでゆくのだから、その威力は宇宙さえも恐れぬほど。それが決定打となる、六人のハートが一つになった証ともいえる。


 黒い雲はその翳りもなく消え、

 スマイリーな快晴が広がった。そこに、レインボーブリッジも飾られた。


 ロック・ガイ三体は大破には至らず中破のまま、その場から動けずに……モノアイも消えて佇む、動作不能となったから、それ以上の攻撃を加えなかった。そのことまで太郎たろう君は受け継いでいた。機体は破壊しても人は殺めないと。そこはしょうさんの思い、そして皆の思いへと繋がって、そして旧号きゅうごうの大いなる願いだから。今はロボットを兵器にしての戦争だけれど、いつの日か、平和のために人と共存できるロボット工学への道を歩めるようにと、それこそが本来の、僕ら研究員の任務だから……


 その思いを胸に、大空高く飛び立つのだ。巨体は大空を飛んでゆく。

 研究所へと帰還するところから、また大願を懸けた戦いが始まるの。


 そして翔さんは、少し顔を赤くしながら、


「なあ、お前……

 今度もまた、俺に命令しろよな。名は? 霧島きりしまって呼んだらいいのか?」


「まあ、それで。……僕は君のこと、葛城かつらぎさんって呼んだらいいのかな?」


「おいおい何だよ、急に畏まって。さっきみたいに翔と呼べよ、何ならお前と呼んでも構わないぞ。それにな、梨花りか千佳ちかみたいに『僕』はなし。あっ、旧号もか。太郎には俺と同じ『俺』の方が似合ってるからな。まあ、ともかく仲良く頼むぜ、リーダーさんよ」


 との翔さんの意外な一面を目の当たりにした。……なら、意外とMさんってこと?



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