第九十二回 戦闘が終われば。


 ――それは、研究所への帰還を意味している。そしてまた、日常に戻る時間だ。



 いつしか出来上がっていたルーティン。意識せずとも時空を超えて……何事もなかったかのように、傍には千佳ちかがいる。語り合いを設けても、普通の会話で……


 壊れることのない日常。本当ならば、僕らが先刻までいた世界は、記憶には残らないはずの夢のような時の流れ。最近わかったことだけど、現実の世界の一分は、パラレルの世界では百分に相当するの。壮絶たるロボット同士の戦いも、現実の世界では夢のよう。


 だからこそ、戦い最中の執筆が……

 実は言うと、反映されているの、僕と千佳のPCに……


 二人して確認し合うの、執筆されているその内容を……


 それで繋がる仲間たち。PCにメモリーがあるように、僕らにもメモリーがあるの。蓄積される闘いの日々。怖い思いも、泣いちゃうことだってあるけれど、何よりもかけがえのない縁。しょうさんとの出会いも、このパラレルな世界がなかったなら、成し得なかった。


 現実の世界での学園で、


 共に過ごすことができ、飯盒炊飯も、この先のXマス・パーティに転ずることもできたから……千佳もまた、太郎たろう君と参加してくれるそうだ。太郎君は、千佳の彼……彼氏。


 そして僕の、初恋の人。


 あの頃は初恋というにはあまりにも幼く、ボーイフレンドの域……


 千佳のように恋仲ではないの。……だから、ちょうど良かった。千佳と三角関係にならずに済んで。三角関係なら、千佳はきっと僕に気を遣う。自分を押し殺してまで……


 そんな千佳を、僕は見たくないから。


 そして太郎君が好きになった子が、千佳で本当に良かったと思えるから。

 だから、もう泣かずに笑えるようになった。なぜなら二人とも、大切な人たちだから。


 そんな二人の時間は、イブの夜……


 千佳と太郎君のデートの夜に、僕は翔さんと可奈かなとで、そっと天体のロマンの世界へ。



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