第一四五回 よく考えてみて。


 ――じゃあ、あれは何だったの? 昨年の年末に見た五千七百メートルの異星人。



 大気圏の傍にいた、しょうさんが「お母さん」と、そう呼んだ……謎の巨人。そして旧号きゅうごうが深く詫びていた。旧号のモデルとなった、永遠の十五歳、旧一もとかずおじちゃんの胸の内。


 この物語の途上、まだ千佳ちかや僕が生まれる前の前……


 執筆していた旧一おじちゃんの早すぎる死、実は……自ら命を絶ったことのよって、旧一おじちゃん創り上げた、このパラレルな世界に多大な影響を齎した。歪む時空と、現実の世界からの環境汚染……つまりは暴走を始めたのだ。五千七百メートルの巨人は、


 実のところ、実の姿ではなかったの……


 つまりはメッセージのために現れた姿。それがこの度の、大局に繋がるのだった。お母さんが翔さんに伝えたかったこと。――それは、それはね、現実の世界との融合だ。


 翔さんのお母さんは、実はもう一緒にいたの。


 四季折々のエンペラーそのものが、翔さんのお母さんだったの。……僕は日々、エンペラーの脳内に語りかけていたのに、気付くこともなく知らないまま……ただ、翔さんだけが、薄々と気付いて、この日に悟っていた。なら、その時にもう決まっていたこと。


 ――こうなることは。


 そして今、ここにいる。パラレルな世界が融合した現実の世界。この場所は御堂筋、とあるラーメン屋。その名は『来夢来人らいむらいと』という……ここに僕らはまた、集ったのだ。


 翔さんはラーメン道を究めるために、ここでアルバイトをしている。


 そして手渡す……「ほら、梨花りかは興味あるだろ、こういうの」と、言葉も添えながら。


 するとするとするとだね、込み上げる歓喜。それは一枚のチケット。片道切符とは違う意味を持つ、一枚のチケット……『万博ロボット博覧会』と、いうことなの。やっぱり大好きなの、ロボット。戦いに明け暮れ、怖い思いもいっぱいしたのだけれど、それでも大好きな気持ちは変わらない。それはまた……そうだね、それもまた弾む笑顔で、


「一緒に行こうぜ、梨花」と、翔さんは言った。

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