第八回 緊急に備え緊急事態。


 ――乗り込めば、いきなりだけど、僕とシンクロする九・八七メートルの機体。



 コクピットはお腹の中……

 少しばかり生臭く? 血の匂いに近い。


 そして前の機体とは違う広さ。……狭くなっている。鼓動が聞こえるの、心臓の音。それに脈打つ血の流れをも感じる。息遣いも。僕のではないの、この機体自身から。


 生きているの。その仕組みは電力? されど、そうなると、ロボットではなく、……その正体は『バイオニック・ロボット』と、可奈かなは答えるのだ。通信機器を使って。


 それから、操縦の手順へと移る。


『時間がないから人型ままいくね。……まずセーフ・レバー解除』


「セーフ・レバー解除って?」


『ええっと、向かって右側の、SFという刻印の入った緑レバー』


 ……って、そうじゃないの。セーフって安全って意味だよね? 何で解除するの? ということを訊きたかったのだけれど、敵は攻めてくるから、取り敢えず解除っと。


「はい、解除」


『次はダッシュ・モードに切り替え。それで準備完了。あとは梨花りか、前の機体と同じ。あなたの執筆にかかってるの。それが機体とのシンクロに繋がるから、頑張ってね』


 って、それが一番難しいのだけど……


 と、思っている間に白銀の敵は、海から飛び上がって一気に、距離を詰めてきた。信じられない程のジャンプ力。推定でも五百メートルはあると思われる。何と甲板の上。


 この研究所は戦艦型の基地でもあるの。海に浮かびながら、航海を続けているの。だから僕は後悔のないよう、エッセイを執筆する。この戦いの模様から得られることを。


 ――激突!


 新たなる『四季折々しきおりおり』という名の僕の機体。可奈は言う、この機体の正式名称を。その名は『四季折々・二式』……進撃する巨人とも思わせるフォルム。どう戦い抜くのか?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る