第五十八回 それでも出撃は。


 ――時と場合を選ばず、降りかかるの。この場から近くで。


 それは何が? 敵、敵が攻めてきた。


 ……警報音。着信音とは別の、警報音が鳴り響く。僕のスマホから。それは何を意味するのか? まさかの出撃命令……だと思うの。今は、修学旅行中だよ? よりにも寄って修学旅行の最中に、それは起こったの。……そう、認めるしかないの?


 機体は来る。自動運転で、だから、今いる場所。伝えなきゃ、今いる場所。今いる場所はね……ええっと、とにかく学園のアナザー施設。研修道場と言っていた。


 でも何県? 地名は?


 現在地がわからない所に、機体は来るの。そして今、向かって……いやいや運ばれてくるという表現に近い。その連絡の一部始終は、シャルロットさんから告げられた。


 そう。スマホから。


 正確にはスマホという端末から、トランシーバーのように流れた指令だ。


 そして状況を把握するのも束の間、事態は急変し、のどかな風景が、心が乾く程の地獄と化した。重厚感のある黒い機体が見える、三体も。ギロリと光るモノアイ……こちらを睨んでいるようにも見える。吹き飛ぶ砂塵、スラスターの焼けるような熱風……


 攻撃は、まだなし。


 どうやら偵察のようにも窺えるのだけど……


「出撃……しなくてよさそうだよ、シャルロットさん」


『出撃命令出てるのよ、梨花りか』「やだ、今日はオフだよ。どうしてもなら、僕だけ出撃するから」『何言ってるの? 三位一体の四季折々じゃない』「わからないの? しょうさんだけはオフなの。人生初の修学旅行なんだよ。何で……そんなのって……」と、泣きそうになった時、ポンポンと肩を叩かれた。振り向くと「翔さん、それに可奈かなまで」


「水臭いじゃねえか。それにその涙は何だ? 俺たち三人なら、あんな奴ら五分……五分で起動不能にしてやるよ、な、そうだろ梨花」――その翔さんの言葉に、僕はコクリと頷いた。可奈もまた同じだ。そして迎える敵。そして姿を現した、僕らの四季折々……



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