第一一〇回 賽子の目と双六。


 ――バンプラ制作の前に、デラックス超合金で合体遊びをしている最中、千佳ちかがいきなり僕のお部屋に入って来るなり、「梨花りか、双六やろっ」と声を掛けてきた。



 超合金の合体も、しょうさんの手で完了したところで、バンプラに移る予定だったけど、


「やろうぜ梨花、一緒に双六……だったっけな?

 バンプラならその後でも、何なら明日からでもOKだしさ。それから千佳、教えろよな双六。俺は、これも初めてなんだ。ホント、我ながら呆れるほど、何も知らなくてさ」



 戦闘では、僕らの想像の付かないことまで知り尽くしている翔さんだけど、


 無邪気な子供に思えるほど、子供の遊びを知らない。……あっ、もちろん大人の遊びもだけど。大人の世界を、僕らは一緒に歩んでゆくことになるのかな? 来年もこうして一緒に遊んで、このまま五年先も十年先も、ずっとずっと……


「ほら、来いよ梨花、準備OKだぜ」


「梨花、人生ゲームじゃないけど、エブリ系の双六だけどやろっ」


 広がるテーブルゲーム。千佳は℮スポーツを始めとした所謂ゲーマなの。モリオカートも大好物で、球技は僕と同じで苦手だけど、ボーリングだけはピカ一で僕も敵わない。


 テーブルゲームも得意と思っていたけど……

 賽子を回すと、振出に戻るという事態に……


 そして一番先に上がったのが、何と翔さん。僕は二番目……つまり賽子の目と同じ数だけ進んだら、双六の文字は振出に戻ると書かれてあったので、そのために千佳は振出に戻ることになって、そこでついた大いなる差。まあ、運も実力の内というから、


「リベンジする?」と訊いてみたの、千佳に。


「ううん、やるんでしょバンプラ。翔さんと一緒に。僕も付き合うよ」と千佳は言う。


 千佳は決して組立が得意じゃないの。……でも「楽しいから」と、そうニッコリと言ってくれるから。その笑顔が「一緒にやろうぜ、千佳」と言わせるの、喜びの翔さんに。

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