第五十五回 ゆらゆら陽炎に。


 ――まあまあ、見て給え。論より証拠だ。そろそろ相手もお出ましのようだ。



 キッカー君の言う通り、ぼんやりと……そしてハッキリと、その姿を現した。


「な、何? この奇怪な姿は?」


 と、思わず出た言葉。僕の中では戦慄が走る。何処までも広がる黒い楕円形。そこに巨大な目が幾つもある無数に続いてゆく。その目の数々が、ギロリと一斉に睨む。


「臆するな梨花りか、俺たちもいるから」


 と、しょうさんの声が飛ぶ。とても励みになる言葉だ。そして切り込む、キッカー君が搭乗しているモー・ニカ。武装は……ボーガン? 矢を飛ばすようだ。矢を放つの。


「題して、自由の矢だ」


 金色に光り輝く矢。それが数キロにも及ぶ大きな巨体の、目の一つにヒット。呻き声をあげる巨体。……痛みを感じている。ダメージはあるようだ。それも、一発で。


「君達、気をつけろよ。もうそろそろ赤い閃光が放たれるからな。……絶対に目を合わせるなよ。目を瞑って三秒待ってから、四季折々のガトリング砲を一斉に放てよ」


「お前、俺たちに命令するのか?」


「ああ、命が惜しかったらな。葛城かつらぎ君とか言ったな、三人の中では唯一、戦闘の味を知ってるようだが、自信過剰なのも考えものだぞ。僕の方が君よりキャリアが上だ」


「何だと? お前に何がわかる? この二人はな、半人前の俺についてこれる、最高のメンバーなんだ。確かにお前は凄腕のようだが、俺たちだって修羅場を経験したんだ。何回もな。キャリアがすべてじゃないんだ。自信過剰はお前の方じゃないか、キッカー」


「なら、見せてもらうとするよ。四季折々の性能とやらを。そして君の言う、チームワークってやつを。……精々頑張って、僕を楽しましてくれよ」


「言われなくたって、そうしてやらあ! 行くぞ、梨花、可奈かな。やってやるぞ!」


 ――次の瞬間。四季折々の一斉放射!


 アーマーに仕込まれたミサイルポットや右腕のガトリング砲、左腕のマシンガンも。

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