第一二四回 葛城翔の一人称。


 ――もっとしょうさんの心に近づくため、この度は翔さんの一人称でお話は進む。



 駆ける路地。

 ラーメン屋を後にした。必ずまた来てやる。


 そう深く、胸中で約束。……俺が、戦うこと以外に、初めてしたいと思ったこと。そう自覚した時、熱い涙を流した。生きていこうと思った。死ぬことが、怖いと思えた。


 これから向かう戦いも、まだ続いてゆくけど……


 戦いが飽きるというよりも、戦いたくない気持ちが膨れ上がっていることを、この子たちに気付かされていた、いつの間にか。操縦桿を握るのも、手に汗握るように。心も渇きを感じる。胸元が苦しく吐きそうになることさえ、ついこの間あった。


 出会う前は、そんなことなかったのに……


 寧ろ、命の危機を感じる程、喜びさえあったのに……今はどうだろう? 逃げ出したくなる衝動に駆られそうだ。でも向かう。ボヘミアン組合の矯正。そして本来の使命に目覚めさせるためにも。そして、お母さんとアンさんを救うためにも……


 そうだよな、梨花りか


 戦いは終わる時がある。長いトンネルを抜けるように。


 俺は皆と一緒に、戦いにピリオドを打ちたい。そして親子三人、一緒に暮らしたい。一緒に食べたい、会田あいださんのラーメン。そこからラーメン道に励みたい。いつの日にか、俺は持つ。小さいながらも我がラーメン店を。お父さんもお母さんも一緒に……


 駆ける大通り。


 俺は梨花に感謝する。アンさんのことで気が滅入っていた俺を、復活させてくれたことに。何よりも、俺が認めた、凄い奴。

……初めの頃は頼りない奴、と思っていたけど、ところがどっこい。懐の広さは、もしかしたら俺以上かもしれない。このまま、ずっと歩み続けたい。横を走る梨花に、こころからの『ありがとう!』だ。声高らかに。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る