第二十六章 ――香車。

第一二六回 喩えるのならば。


 ――ここからは、再び梨花りかの一人称。



 エンペラーの内部で、このお話は綴られている? ……うむ、そんな時もある。凡そ七割ほどは。時として、夜のお部屋でも執筆。千佳ちかも一緒、あれから僕を手伝ってくれる。


 その作品の名前は、『りかの学習帳……』


 この機体、四季折々はエンペラーになる前から、その一部始終を知っている。つまりは四季折々というスーパーロボットに内蔵されている電子頭脳にメモリーされているのだ。


 千年先まで、消えることのないメモリーズ。


 しょうさんは言っていた……いや、そのメモリーズの中に刻んでいた。『このパラレルの世界は、いつかエンペラーによって終息する』と。それも深刻な顔をして、その時に出た言葉だったのかもしれない。思えば、エンペラーの電子頭脳って……


 もとは旧号きゅうごうの、正確には旧一もとかずおじちゃんの脳を再現している。……そう、旧号が言っていた。そうしたなら、エンペラーと旧一おじちゃんの関係は? 今の乗組員、誰と深い関係があったのか? 僕が知っている限りでは、その人物は千佳ということになる。


 僕らの中では、唯一、幽霊の旧一おじちゃんと会話できる少女。千佳以外は誰も、旧一おじちゃんとの会話以前の問題で、その姿さえも見る者がいない。


 だからといって、


 千佳がこの世界……パラレルな世界のことに詳しいのかいうのなら、決してそうではない。寧ろ初めて知ったそうなのだ。旧一おじちゃんが、この執筆をしたかったこと。


 そしてそれだけではなく……

 謎は深まってゆく一方で……


 葛城かつらぎ翔という少女の謎も深まるのだ。それは何か? エンペラーと共鳴する場面は、彼女の方が圧倒的に多い。寧ろ、彼女の意のままにエンペラーは動いてくれ、進化しているのだ。もしかしたら、彼女と旧一おじちゃんの間には、もっと深いことがあるのかもしれない。僕らの理解を越えたもの? 少なくとも、無関係とは有り得ないのだ。



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