第6話 新しい(?)発見
軍の(地獄の)訓練も終わり、勉強も終わった、だいたい午後三時くらい。
かなりアバウトだが、一応理由がある。
何せ、この世界には時計がないのだ。
大まかな時間は町の中央にある鐘の音で知らせているのだが、ここはとてつもなく広い王城だ。場所によっては、全くもって鐘の音が聞こえない。
そして、なぜか私の部屋はみんなの部屋から離れた北側ところにある。
いやー、みんなの部屋は南側の広い客室なのになー。私だけ、何でやたらに狭い北側の小部屋なんだろうなー。初日、ベッドとかがなくて毛布だけで寝てたのに、みんな、ふわふわお布団で気持ちよい目覚めを迎えられたんだってねー。
………何なの?私、嫌われてんの?
まあ、あかねちゃんや前田先生の抗議で初日に比べればよい環境になっている。
いや、ほら、ちゃんと敷布団があるじゃん?机だってあるよ?何も入っていないけど、本棚まで。
………いやー、嫌われてるなー、私。
まあ、生活するにはこれくらいで問題はない。
部屋なんて、布団があればそれでいい。勉強やアビリティの実験は図書室の机で十分だし、ご飯はそもそもやたらに広い食堂で済ませている。
着替えや作ったポーションや風邪薬等をしまえるくらいの収納ならあるし、何一つ不便はない。
………ないったらない。
まあ、強いて言えば暇を潰せるものが本くらいしかないというのが欠点だろうか。
王城の図書館の本は、すごく難しい。大人の貴族向け小説がほとんどだからだ。
勉強にはなるし、それなりに楽しいないようなのだが、飽きる。
久々に部屋でごろごろしていたところ、あることに気がついた。
そういえば、アビリティの薬物知識、試したことがなくね?と。
大量に持っていた低級ポーションを引き出しから取り出す。
低級ポーションは、だいたい人差し指くらいの大きさの小瓶の中に入っている。色は薄い緑色で、傷口にかけたり、飲んだりして使うらしい。
一度だけ使ったことがあるが、味は薄い青汁のような感じだ。美味しいとは言えないが、飲めないほど不味いわけではない。
瓶は支給された物を使っている。まだあと10ダースくらいはあるだろう。
さて、それをじっと見つめていると、脳裏に、なにやら説明文のようなものが現れた。
[低級ポーション]
HPを30回復する。
材料 水(MP代用) ハーブ(MP代用)
「んん?材料にMP代用?」
よくわからない。
「代用ってことは、代用せずに水とハーブでも作れるっていうこと?」
ものは試しだ。ちょっと食堂に行ってこよう。
さて、集めたハーブ数種類と、井戸水。
今の私のMPは10。普通にやれば一個は作れるはずだ。
「生成(薬品)。」
瓶を左手に、低級ポーションをイメージして唱えれば、見覚えのある液体。
けれども、いつもなら襲ってくるはずの頭痛がない。
MP残量をチェックしてみれば、残りは7。
残りは、7。
「はあ!?ななぁ!?」
MPを3しか使っていない!?
「薬物知識ぃぃぃい!!」
[低級ポーション]
HPを30回復する。
材料 水 ミント(ハーブ)
ハーブは、食堂にあったミントを使って作ったからだろう。水やハーブの隣にかかれていた、MP代用の文字がなくなっている。
おいおい、マジか。
今までの苦労は一体何だったんだ。一回作ればMP切れの頭痛が襲ってきていた今までのあれは!!
「……ちょっと、いろいろチェックしよう。」
次は、水を使わず、ハーブだけでの生成。
「生成(薬品)。」
使ったMPは7。ただいまの残りMP0。
「うがぁぁぁぁあ………!」
頭痛のダイレクトアタック!!
私の頭にクリティカルヒット!!
「頭痛が!痛い!」
日本語を崩壊させてみたりもしたが、さすがに一人部屋でこんなことをしているとひどく空しい気持ちになったので、すぐにやめる。
ちょうど0になってしまったが、これでわかった。
低級ポーション自体を作るのに必要なMPは3だ。それに水のMP代用に4、ハーブのMP代用に3が必要だったのだろう。
試しにミントで作った低級ポーションを飲んでみれば、薄い青汁の味から、薄いミントの爽やかな味に変わっていた。
好みがわかれそうな味だけど、個人的には美味しいと思う。
さて、MPポーションを使って、いろいろと実験してみよう。
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[低級ポーション] 必要MP 3
HPを30回復する。液体。
材料 水 ハーブ
[風邪薬] 必要MP 3
風邪を治す。粉末。お湯に溶かして飲むと効果的。
材料 ハーブ(乾燥)
MP代用
水…4
ハーブ…3
ハーブ(乾燥)…5
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