第47話 あかねちゃんと第一王子

 夕飯の時間。さんざん訓練をしていた茜は、だだっ広い食堂の扉を開けた。

 食堂の席は九割方が埋まり、ほとんどのクラスメイトが食事を楽しんでいた。


「……あれ?葵ちゃん、ののは?」


 キョロキョロと食堂の中を見渡すも、足名の姿は見当たらない。

 先に夕食を食べていた葵は、キョトンとした顔で茜に言う。


「茜さんと一緒にいたのじゃないの?部屋には居なかったわよ?」

「え……」


 茜は、悪い予感がした。


 その予感に答えるように、食堂の扉が開く。

 入ってきたのは、リンフォール第一王子。リンフォールは、食堂の中を見渡した後、口を開いた。


「ふむ?アシナ様は今、いずこに?」

「あなたが主催のお茶会に出ていたのじゃないの?」


 茜のその言葉を聞いたリンフォールは、ピクリと体を硬直させ、後ろに控えていたメイドににこやかに。


「ミン、アシナ様は本日、どの護衛がついていたかな?」

「……護衛?」


 葵は思わず質問する。

 すると、リンフォールは驚いたように言う。


「勇者さま方は国賓なのですよ?一人一人に護衛の騎士がついているはずです。」

「……何それ。聞いたことも、見たことも無いわよ?」


 茜のその言葉を聞いたリンフォールは、笑顔の仮面を外して、後ろのメイドに大声で命令する。


「ミン、今すぐ国王と宰相、あと、第三以外の王子の所在を確認しろ!」

「かしこまりました。」


 命令を受けたメイドは、半ば駆け足で食堂から出ていった。

 慌てた様子のリンフォールに、茜は掴みかかる。


「いったい、何が起きているの?」

「……申し訳ないが、お答えすることができない。」

「答えて。今、ののに、親友に、何があったの?」


 無意識下に【威圧】を発動させながら、茜は質問する。近衛騎士が剣を抜くが、リンフォールはそれを手をあげて制止した。


 サワサワとしていた食堂が、静まり返る。


 リンフォールは、暫く口を閉じた後、頭を抱えて、答える。


「不味いことが、起きた。」

「そんなの分かっているわ!何が起きたのかを具体的に答えて!」


 茜は、声を荒げて質問する。


「……暗殺者が、この王宮に侵入した可能性がある。」

「………っ!!」


 リンフォールの言葉に、茜は顔をひきつらせて硬直する。

 食堂がざわりとする。


「じゃあ、足名さんは……!」

「………。」


 茜はリンフォールの胸ぐらを離し、突き飛ばす。

 そして、食堂の扉を開け、外に駆け出す。


「シマザキ様を止めろ!」


 リンフォールは近衛騎士に命令した。そして、食堂にいる前田先生に声をかける。


 異変が王宮に蔓延はびこり、花を咲かせようとしていた。


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「お腹すいた。」

「……知らない………」


 クルートさんは、短く言い返した。

 私はふと、クルートさんに質問する。


「お茶会のとき、オニカブトを食べ物に混ぜたのって、クルートさん?」

「……違う……俺……毒物……使わない……。」

「ふーん、じゃあ、誰が混ぜたのだろうね。」

「……知らない……。いや、…………ああ。……うん、問題……ないよ……。」

「ん?何?」


 クルートさんは、完全に沈黙した。

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