第3話 おいおい、何の冗談だ(白目)
それからはあれよあれよというまに話は進み、我らが2-Aはいわゆるステータスをチェックすることになった。
これは、すべて一軍グループの
先ほどの(頭の痛い)出来事をちょっとまとめよう。
「ようこそ、勇者よ。___どうか、魔王を打ち取ってくれ。」
そういった王に対し、異を唱えたのは、私たち2-Aの担任、前田先生だ。
いきなり連れてきた挙句、殺人を頼むなど非常識。魔物は人ではない?無理やり連れてきた人に殺しを頼んでいること自体非常識だ。あなた方の国では儀式なのかもしれないが、これはどう考えたって誘拐。あなたたちの国には常識というものがないのか。頭イッてんの?馬鹿なの?死ぬの?
要約すればそういう意味のことをとにかく丁寧な言葉でいう先生。その時の前田先生は、額に青筋を浮かべながら完璧な笑みを浮かべるという離れ業を見せてくれた。さすがに国語を教える先生だと思う。完璧な敬語なのに、明らかに怒りを伝えて(煽って)いた。
その言葉で傷ついたのだろう。王様の隣で静かにたたずんでいた王女様が涙目になった。
それを見た朝井が一言。
「先生。魔王、倒しましょうよ。」
はぁ?ってなった。
ただ、彼は我らが2-Aのカースト最上位の好青年だ。ほかの人を圧倒するレベルでのイケメン。__まあ、私のタイプではないが。
そして、かなりいい人だ。誰にでも分け隔てなく接し、公平公正な人物だ。__まあ、ありがた迷惑ではあるが。
そんな彼が、そう発言したら、どうなるか。
「朝井がそう言うなら、俺も魔王討伐を手伝うぜ。」
朝井君の親友、
「俺も手伝うよ。」
「ああ、俺もやるぜ!」
「わ、わたしだって!」
こうして、数分後には、(私をなぜか含む)2-A全員が魔王討伐を了承したことになった。
あかねちゃん?……あの子、なんだかんだ言ってカースト上位だから、半ば無理やり了承したことに(いつの間にか)なっている。
その後、クリストさんが何やら球体のきれいな水晶玉みたいなものを持ってきて、触るように指示してきた。
この流れは変えられないと判断した前田先生は、まず自身でその水晶玉に触れた後、名前の順で水晶に触るように指示した。
……さて、ここで、思い出してほしい。
私の名前は、ののだが、それは、あくまで下の名前だ。苗字?ほら、一話と二話を見返すか、作品紹介のところを見てくれよ。
あー、つまり、あれだ。
私の名前、足名 のので、出席番号2番なんだよね……
「まずは俺からか。」
「はい。アサイさん。この水晶玉に触ってください。」
ザ、主人公の朝井が触れると、水晶玉は途端に強烈な光を発した。
クリストさんはとても驚いた表情をして、ステータスを読み上げる。
「ジョブは、『勇者』?!レベル1なのにステータスが全て100を超えているうえに、オリジナルアビリティすら持っている!!?」
目の前で行われるやり取り。本当にやめてください、後ろの騎士さん。ちらちら期待する目でこっちを見ないで。プレッシャーで死んじゃうから。
「つぎは、アシナさんですね!」
やめてくれ、クリストさん。キラキラした笑みでこっちを見ないでください。悪い予感しかしないんだ。
「……はい。」
私は、そっと水晶玉に触れる。
光る、かと思ったか?
そんなわけないだろ。
水晶は、そのまま。淡々と
クリストさんのキラキラとした笑みが、「えっ」という困惑に変わり、そして、がっかりとした表情になった。
その中二臭い見た目から繰り出される顔芸に、クラスの中に笑いが生まれる。
ふざけんな後ろの騎士さん。お前は笑うんじゃねえよ。
私のステータスは、こうだった。
名前 足名 のの
種族 人間 レベル 1
ジョブ 薬師
HP 20 MP 10 筋力 15 知力 20 瞬発力 15 精神力 20
アビリティ 生成(薬品)【1】 薬物知識【1】
「薬師というジョブは、珍しいことは珍しいのですが……ステータスが平凡ですね。」
クリストさんが、残念そうにそう言う。
やめろ。悲しいだろ。
「レベル1の人の、典型的なステータス分布です。」
そう言って、次の人が呼ばれていく。
「私、結界師だって!」
「舞ちゃんは踊り子でしょ、いいなー、私なんて火魔法使いよ?」
「茜ちゃん、剣士でしょ?かっこいい!!」
「……のの。あなたは、珍しいジョブらしいじゃない。落ち込む必要なんて、何一つないじゃない。」
半分涙目になりかけた私に、あかねちゃんはやさしい声をかけてくる。
ちなみにだが、彼女のステータスはこうだ。
名前 嶋崎 茜
種族 人間 レベル 1
ジョブ 剣士
HP 80 MP 50 筋力 70 知力 60 瞬発力 90 精神力 60
オリジナルアビリティ 精神統一
アビリティ 剣術【2】 体術【1】
「……別に、落ち込んでないもん。」
「あんた、『もん』って言うの、似合わないわね。」
あきれた顔であかねちゃんはそういう。
けれど、私は顔を合わせない。あかねちゃんに背を向けたまま、ふかふかの絨毯の上で体育座りをする。
……僻んでいるのは、知っている。嫉妬していることも、わかっている。
でも、私だけなのだ。ここまで、ステータスが低いのは。
オリジナルアビリティは持っている人と、持っていない人がいた。
だけれども、ステータスはみな高かった。
最低の数字は、筋力 10という数値の人もいた。
けれど、その人は、MP 110 知力 90 精神力 120 という、軽くありえない数字をたたき出していたのだ。当然のように、レベルは1だ。
どうしても、他人と比べてしまう。どうしても、ふがいなく感じてしまう。
__また、あかねちゃんと差ができちゃった。
少しだけ寂しいという気持ちを抱え、私はただひたすら、こちらと顔を合わせようとするあかねちゃんと熾烈な攻防を繰り返していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます