第58話 テンプレート(笑)

 足名のターンです。

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 冒険者ギルドの中はそれなりの人数の人がいた。

 突然スキップしながら入ってきた私に、奇異の視線が集まる。


 周囲の視線に耐えながら、私は依頼達成報告のカウンターの列に並ぶ。すると、ふっと視線が消え失せた。なぜ?


 後々知った話だが、私は警戒されていたらしい。(残念なことに)男だか女だかわからない姿で、室内にも関わらずフードを深々と被っている。武器を持っている様子もない。で、スキップしながらギルドに入ってきた。……あれ、警戒されて当然じゃね?


「次の方。」


 男性職員がぶっきらぼうに言う。


「これをお願いします。」


 私はそう言うとカウンターで達成報告の書類を提出する。


「え?あ、はあ………。ギルドカードを提示してください。」

「はい。」


 なぜかちょっと驚いた様子の男性職員に、私は『G』と書かれた木製のギルドカードを提示する。


「ありがとうございます。『ドブ掃除』と『ゴミ拾い』の依頼両方成功で大銅貨2枚と銅貨3枚です。確認をしてください。」


 男性職員が渡してきたのは、2枚の大銅貨と3枚の銅貨。しっかりと見て、言う。


「はい。……丁度ですね。」

「では、お渡しします。シロさんは後8回の依頼と討伐依頼1回の達成でランクを上げることができます。」

「わかりました。」

「おい、待てやそこのチビ。」


 私がちょうどお金を受け取ったその時。背後から低い声が私を呼び止めようとした。多分、【威圧】を使っているのかな?足がすくみかけた。


 精神汚濁耐性がないと不便だな。


「あの、討伐依頼を達成しないと、ランクを上げることが出来ないのですか?」

「え?ええ……そうですが……」


 男性の職員がチラチラと私の背後を見ながら歯切れ悪く答える。


「聞こえてんのか!チビ!!」


 イラついたのか、より大きな声が背後から聞こえてくる。が、私の今の名前はチビではない。シロだ。


「わかりました。ありがとうございます。」

「おい、男だか女だかわかんねえチビ!」


 後ろで何かを言われている気がする。

 カウンターをずっと占領し続けるわけにもいかないため、私は後ろを振りかえる。


 立っていたのは、頬に深い切り傷のあるオレンジ色の髪の男性。大きな斧を背中に、何かの革でできたレザーアーマーを身に付けている。髪の色はさておき、パッと見は20歳くらいの人間に見える。


 私が振り向いたのに気がつき、ちょっとだけ嬉しそうな顔をして、【威圧】を発動させると男性は凄んだ。


「お前だよ、お前!」

「誰を指していて言っているのかは分かりませんが、私はシロです。」


 私の発言を聞いた男性は、不愉快そうに眉をひそめ、男性は頭をわしわしと掻いてから言う。


「俺はルーラーだ。」

「では、ルーラーさん。何の用ですか?」


 カウンターの列から離れて、私は質問する。

 男性、ルーラーさんは、気まずそうに唸ると近くの空いていたテーブルにつく。


「あー、あれだ。小さい子供が、ここにいるにはちょっとどうかと思ってな……。」

「はあ……親切に、どうも。」


 私がそう言った瞬間、周囲の冒険者が一斉に笑い出す。ねえ、いったい何なの?


 ルーラーさんは毒気が抜かれたような表情をする。


「あー、何だ、こんなとこにガキ一人で来るってことは、それなりに事情があるのだろう?」

「ええ、まあ?」

「何で俺に聞くんだよ。……確かに、色々あったろうけど、冒険者はやめた方がいいぞ。」

「すいませーん、水下さい。」

「聞いてる?聞いてるのか、お前!」


 話が長くなる予感のした私は、水を注文する。ルーラーさんは盛大につっこむ。

 周囲の視線が一斉に優しくなる。


 とりあえず、私はルーラーさんに言う。


「社会的信用のない人が犯罪をせずに生きていける手段なんて、これくらいしかないじゃないですか。」


 私の言葉を聞いたルーラーさんは、顔をしかめる。私はウエイターさんが運んできてくれた水にさりげなく薬品知識を使ってから、水に口をつける。


 うん、水だ。


「で、何の用ですか?」

「ええ?うーん、もうねえや。王都支部は派閥とかがあって面倒だから、気ぃつけろよ。」


 ルーラーさんはそう言うとテーブルから離れていった。






 足名が冒険者ギルドから出ていった直後。


「『新人いびり』のルーラーが引いてやんの!」


 そう囃し立てる熊の獣人の男に、ルーラーは拳を振り下ろす。

 いてえ!!と、悲鳴めいた非難の声が熊の獣人から上がるが、ルーラーはそれを無視する。


「うるせえな、一応、俺は『火炎の戦斧』だ。」


 ルーラーは背負った斧を指差しながら言う。

 熊の獣人は、「だっせえ異名」とケラケラと笑う。


「いやー、あんなちっちゃい子にお前の【戦人の威圧】が効かないとか。笑えるよ。」

「笑えねえよ。自信なくすわ。」


 ルーラーはそう言うと獣人の隣に座り、エールお酒とつまみを注文する。


「で、どんな子だった?」


 先に料理をつまんでいた熊の獣人は、ルーラーにグラスを渡しながら聞く。


「あー、わかんねえ。何かすげえ白かったのはわかったけどよ、そのせいで印象が薄いんだよ。」

「えー。じゃあ、せめて、男か女かはわかった?」

「声は女ぽかったが、それにしちゃ貧相な体だったな。つーか、パッと見武器も魔法の発動体も持っていねえからよく見てなかったわ。」


 使えないなあ、と熊の獣人はぼやく。再びルーラーの拳が獣人の頭に炸裂した。


 パーティー『ドラゴンの息吹』リーダー、Aランク冒険者ルーラーの裏話。

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