第21話 閑話 ダンジョン探索前夜 王宮の裏側で

「王様。此度の異世界勇者召喚の儀式は、失敗だったのでは?」


 宰相が、王様に進言する。


 金と宝石で美しく装飾された豪華絢爛な、いや、悪趣味な王冠を被った王はその発言に鼻で笑った。


「構わん。隣国がキナ臭いのは事実だろう。それが、というだけだ。ついでに、金になりそうなジョブを持つものも多い。魔王の討伐にもし成功したなら、隷属の首輪でも着けて手駒にすればいい。」


 失敗したなら、死ぬだけだ。王はそう笑う。

 真っ赤な絨毯を足でいじりながら、王様は面倒くさそうにこう聞く。


「そう言えば、かの蛮族の国からは連絡はきたか?」

「大変申し訳ないことですが、『否』という連絡のみでした。」


 宰相は申し訳なさそうにそう言う。

 王は盛大に舌打ちをする。


「わざわざ獣人ごときを妾にしてやろうというのに、やはりやつらには知能などないのだな。」

「全く、あんな亜人が我々人間の提案を却下するとは……。」


 宰相はやれやれ、と首を降って王に同意する。

 並々と注がれた高級ぶどう酒で喉を潤しながら、王は言葉を続ける。


「我が国軍の隊長。あやつ、何を考えて異世界人どもを訓練しているのだか。ステータスなぞあやつらを適当なダンジョンに放り込めばいいものを。」


 時間のかけすぎだ。そう言う王様に宰相は苦虫を噛み潰したような表情で、


「異世界人どもの先生だという男がうるさいのですよ。やれ非常識だとか、やれ生徒の安全を考えろとか。異世界人よそものの癖に。」

「確かに、我が何度あやつらをダンジョンに放り込もうとしても先手を打ってきたな。……いっそ殺してしまうか。」

「……異世界人がきどもに違和感を持たれないよう、ダンジョンでの事故として処理しましょうか。」

「あとはあのクリストという若造だな。神様がどうとほざくせいで異世界人どもに隷属の首輪がつけられん。」








「なあ、翔大しょうた。これって、ヤバいんじゃない?」

「なあ、翔悟しょうご。これ、みんなに伝えた方がいいんじゃない?」


 異世界人の双子が見ているとも知らずに、王様と宰相の夜の会話は続いていく……

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