第22話 王都ダンジョン

 レンガ造りの大きな建物の目の前には、顔色の悪い30


 ちなみに、2ーAの生徒数は28人だ。


 後の2人?


 クリストさんと前田先生だ。


「……朝なんて、こなけりゃよかったのに。」

「……今日だけはののに賛成ね。」


 あかねちゃんが私の言葉に同意する。

 まるで葬式のように静まり返る私たち。

 理由は、数時間前に遡る。




「おーい、足名さんや、起きてる?」


 ぺしぺしと顔を叩いてくる男子。

 私はこいつを知っている。


「……なあ、翔悟。お前、こんなくそ真夜中に乙女の部屋に侵入して挙げ句の果て叩き起こすなんて、なに考えてんの?」

「おと……め?」

「一回殴らせろ。」


 窓の外を見ても、星が綺麗に輝いているだけだ。

 明日はダンジョン探索だから早く寝ていたのに。

 私は不機嫌そうな目で翔悟を睨み付ける。


「ま、いいや。足名さん、大切なことを言うから、一字一句聞き逃さないでね?」


 急に真面目な顔をする翔悟。


「……何かあったの?」


 お調子者のこいつが真面目な顔をするなんて、明日は槍でも降ってくるのか?


「今日さ、王と宰相が、ずいぶんときな臭いことをしゃべってて。」


 翔悟は先程のことを話す。


 曰く、王様は私たちを奴隷にしようとしている。

 曰く、王様はクリストさんと前田先生を殺そうとしている。

 気になって王様の部屋を調べてみたら、奴隷の首輪が28あったらしい。


「……きな臭いどころかどブラックじゃない。」

「うん。で、さ。明日のダンジョン探索、絶対危険なことが有ると思うから。覚悟しておいてね。」

「翔大と一緒にいないってことは、クラスの一人一人に言いに行っているってこと?」

「うん。かなりヤバいだろうからね。」


 そろそろ、次の人のところに行かないと、と翔悟は窓から外へ出ていく。


____そのあと、寝る間を惜しんで薬を量産し続けて、気がつけば朝になっていた。




「……腐っているわね。この国。」

「それな。」


 あかねちゃんは、腰にさした刀を左手で撫でながら、苦々しく呟いた。


「配られた物資もかなり不公平だったのでしょ?」

「うん。私、薬とMPがないとそもそも何もできないのに、MPポーションの類いが入っていなかったの。」


 まあ、昨夜のうちにMPポーションが作れるようになったから必要ないけれどもな。


「私はむしろ、要らないものまで入っていたわ。、金のネックレス。」

「……何の付与?」

「……[劣情のネックレス]。効果は、身に付けると王に対して発情するっていう効果。」

「王水、生成しようか?」

「こんな下らないことでMPを使わないで。」


 昨夜さんざん薬を生成しまくったお陰で、【生成(薬品)】と【MP軽減(薬品)】のレベルが上がったのだ。余程MPを必要とする薬品でない限りは作れる。


 まあ、MP18が上限だけどね。


 さて、目の前にはレンガ造りの大きな建物。

 この建物は、いわゆる冒険者の店、もしくは冒険者ギルドというやつだ。

 この国、『勇者の国』ギルド王都支部だ。


 クリストさんの授業で知ったことだが、冒険者ギルドは国の権力とは関わらずいられる、唯一の組織らしい。

 実力主義で、弱肉強食。荒くれものや犯罪者が多くいるとか、いないとか。


 各国に支部があり、魔物の討伐や護衛、薬草の採取、清掃作業などを行うのだとか。


____厳つい装備をした冒険者が清掃作業をしているところを想像して笑ってしまったのは、いい思い出だ。


 また、冒険者には、ランクがあり、G、F、E、D、C、A、B、S、SS、SSSの序列がある。当然、Gが新入り、Dで一人前、Cで腕利き、SSが英雄だ。


 SSSは金を積んで得る称号らしく、貴族が箔付けのためによく名乗るのだとか。


 『勇者の国』は、SSSの冒険者貴族が結構いる。というか、「お茶会で父親がSSSランクなの」と自慢するご令嬢がたくさんいた。


 さて、ダンジョンに入るためには、冒険者ギルドのギルドカードというものが必要だ。


 なくても、入ることはできる。が、ダンジョンの施設である移動水晶が使えない。


 移動水晶というのは、だいたい手のひらに乗るくらいの小さな水晶玉で、一層に一個必ずある。


 かなり便利な代物で、ダンジョン内であるならばに移動できるのだ。


 、だ。


 ボス部屋の前に移動したり、薬草の群生地に移動したり、とにかくまあ、めちゃくちゃに使い勝手が良いらしい。


 まあ、帰りは水晶玉のところに戻らなくてはいけないのだけれども。



 レンガ造りの建物の中に入ると、私たちはカウンターに並ぶ。


 登録するのは、私たち2ーAの生徒と、前田先生の合計29人。


 カウンターの前には結構な行列ができてしまった。申し訳ない。


 登録後のお約束の先輩冒険者に喧嘩を売られるイベントは起きなかった。そりゃそうだろう。たくさんの兵士や勇者国軍隊長が私たちの回りにいるのだから。


 さっさと登録を済ませて、私たちはダンジョンに向かう。


____いやだなぁ……。

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