第32話 ……ありかよそんなの。

 みんなよりも2時間遅れで三層の広場に着いた私たちは、持ってきた非常食をもしゃもしゃと食べる。


 ……用意されていたシチュー(モドキ)とパンはみんなに食べられていた。


 侍女さんや兵士さんが譲ろうとしてきたけれども、他人の分を貰うのも気が引けたので、やめて置いた。


 非常食は、硬焼きパンに干し肉、干し野菜。固い、しょっぱい、美味しくないの三点揃いだ。


「相変わらず不味いですね。」


 隅の方で地面に座りながら、クリストさんが渋い顔をして呟く。

 私は思わずクリストさんに質問する。


「非常食、食べたことがあるのですか?」


 クリストさんは首をたてにふる。


「ええ。私は元は貴族ですが、出家した身ですので。どうにか非常食を美味しく食べようと努力はしたのですが……。無理でした。」

「というか、クリストさんって貴族だったのか!?」


 宮藤くんが今更なことに驚く。自己紹介の時、名字を名乗っていたじゃん。

 葵ちゃんが硬焼きパンをかじりながら呆れたように宮藤くんを見る。


「このあと、5層まで全員で移動するのですよね?」


 佐藤さんは干し野菜と干し肉を浸した水を熱しながらクリストさんに聞く。


 ん?


「ちょちょちょっ、佐藤さん!!そんな食べ方あり!?」


 私は思わず佐藤さんに詰め寄る。

 ある程度加熱し、水分を吸って柔らかくなったホウレン草のような干し野菜をフォークでつつきながら、佐藤さんは答える。


「ロキがこの食べ方を教えてくれた。」

『不味い飯なんて食いてぇ訳がねぇだろ。どうせマズいならまだマシにしてから食うわ。』


 ロキは茹でられて塩分がほどよく落ちた干し肉にかぶりつきながら答える。

 ちなみに、魔法はロキが使っているようだ。佐藤さんがやると消し炭すら残らないからね。


「その手があったか……。」


 前田先生がちょっとだけ驚いたように佐藤さんを見る。

 そんなこんなで私たちは食事を終えた。



 食事を終えた私たちは、4層まで降りてみんなと合流する。


 異変は、そこで起きていた。


 4層の広場で、

 辛うじて教官とあかねちゃん、そして朝井くんが立ってやって来る魔物を追い返していたが、その体は既に満身創痍だった。


 ダンジョンの床には、幾つもの空き瓶が転がっている。きっと、大量のポーションを使用したのだろう。


「あかねちゃん!?」


 私は思わず大声を上げる。


「今参戦する!」

「足止めする!【植物召喚】!!」

「ジルドレ、後方支援をしている魔物を狙え!」

「了解。」


 剣野くんが刀を抜き払い、葵ちゃんが蔦植物で魔物を止める。宮藤くんとジルドレは後方でヒールや強化魔法を使っている魔物を一匹一匹確実に倒していく。


「神よ!この者たちを癒したまえ!!【エリアヒール】!!」

「【アースヒール】」

「【キュアポイズン】……効かない!!」


 クリストさんや佐藤さん、前田先生が倒れているみんなを魔法で癒す。


 私は、何もできない。


 回復を手伝う?____無駄だ。足手まといにしかならない。

 魔物を塩酸で攻撃する?____5回も使えば魔力切れになってしまう。


 そんなことをしている間に、状況は悪くなっていく。


 ……嫌だ。


 あかねちゃんの顔色は酷く悪い。白色を通り越して青ざめてしまっている。


 ふと、観察を続けていた私は、あることに気がついた。


____もしかして、異常状態?


 魔物に何らかの魔法をかけられたのだろうか。


「【薬品知識】!!」


 私はあかねちゃんに対して薬品知識を使う。正しい使い方ではないが、きっと意味があるはずだ。


[中級ポーション]

[HP強化薬]

[筋力強化薬]

[毒消し(弱)]

[中級ポーション]

…………


 幾つもの薬品の情報が頭に流れ込む。

 そして、そのが見えた。


[麻痺毒(遅効性)]


「……はっ!?」

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