第57話 あかねちゃんと英雄

 茜達が足名の死体を発見した朝。

 快晴の空の下、足名の葬式が行われた。


 魔法が存在する世界であるが、死者を蘇生できる魔法は存在していない。

 また、死体の損傷が酷く、保存をしておくわけにもいかない。


 そういう事情があったため、足名の死体は即日火葬となった。


 葬儀の参列者は、2-A全員、城の警備員を除いた騎士兵士、そして、リンフォールら王族。


 クリストの聖火によって燃え上る足名の死体のはいった棺桶。白い炎に包まれ、燃え上がる様は、ある種の神秘を秘めていた。


 白の大炎を泣きながら見守る女子。

 うつむいている男子。


 真っ直ぐ炎を見つめていたのは、茜一人だった。

 茜の握りしめた拳から、血が滴り落ちる。あまりにも強く握ったため、爪が皮膚を裂いてしまったのだ。


 聖火は、10分と少しで消えた。


 棺桶のあった場所に残っていたのは、ほんの少しの遺骨。

 ただし、により、遺骨は半分だけ埋葬された。


 半分だけの遺骨は、葵とリリィの『植物召喚』によって植えられた桜の木の下に埋められた。

 残り半分の遺骨は、瓶に納め前田が所持している。


 もとの世界で、足名の両親に渡すためだ。


 茜に向けて送られた足名の遺書は、以下の通りだ。


『島崎 茜へ


 これがあかねちゃんに届いているということは、私はきっと死んでいるということだと思います。


 要点と要求をまとめるね。


 まず、宰相は信用しちゃダメ。他にも危険なことがあると思うから、あかねちゃん自身の価値を理解しておいてね。


 次に、私の作った薬は全部あかねちゃんに譲ります。『エリクサーモドキ』は少ししかないから、大事に使ってね。


 最後に、私の死体は私の両親に届けて。


 2-Aの皆が、もとの世界に戻れるようになることを心から祈ります。』


 足名の遺書は、遺骨の納められた瓶のなかに入れられた。




 足名の葬式が終わった直後。

 茜は、クルートに連れられて城の裏庭に来ていた。


 裏庭は簡単な野菜やハーブの畑と、使用人の住居がある。


 そんな裏庭に、夕焼けの空のような赤髪の、長身の男性が立っていた。

 男性は至るところに傷跡のある鎧と刃渡り一メートルほどの剣を所持している。


「……こいつ……リュート……。」


 クルートは、男を指差して言う。


 クルートにこいつと呼ばれた男性が振り替える。


「ん?ああ、クルートか。久しぶりだな。二年ぶりくらいか?」


 右目に大きく傷のあるその二十歳くらいの男性は、クルートに話しかける。

 茜の姿を見た男性……リュートを見つめる。


 細く見える長身は無駄のない筋肉に覆われ、動きはしなやかなだ。そして、強者のまとう独特の雰囲気を醸し出している。


______強い。あのオーガよりも、遥かに。


 本物の強者に、茜は無意識に目を見開いていた。


 茜の視線に気がついたのか、リュートは口を開く。


「お前がクルートに紹介されていたやつか。とりあえず、。武器をとっとけ。」

「……っ!?よろしくお願いします!」


 リュートの言葉に、茜は迷わず刀を抜き、構える。

 そんな茜に対してリュートは少しだけ感心したように首肯し、鞘つきの剣を自然体に構える。


 2つの影が一瞬だけ交差し……一つの影が吹っ飛ばされた。


「くはっ!!」


 地面に転がされ、茜は呻き声を上げる。

 リュートは不機嫌そうに眉を寄せると、吠える。


「こい!!お前の意思はその程度か!!」


 その声を聞いてか、聞かずか茜は立ち上がると再びリュートの方へと駆け寄る。

 先程と同じ行動に、リュートは鞘のついた剣を再度振るう。


 ギィィィン!!

 からんからん……


「くっ!?」


______受け流したつもりだったのに……!

 痺れた茜の腕から刀が滑り落ちる。


「……ほう?」


 茜の見たこともない技術に、リュートは感心したような声を上げる。


 見ていたクルートが口を開く。


「……レベル差……それと……体格差……。」


 クルートの言葉を聞いたリュートは、ため息をついて言う。


「やっぱ、そうだよな……。おい、お前。」


 リュートは鞘つきの剣を茜に向けて言う。

 茜は短く答える。


「茜です。嶋崎茜。」

「そうか。じゃあ、アカネ。今のレベルは?」


 そう問われた茜は、ステータスを表示させる。


 名前 嶋崎 茜

 種族 人間 レベル 21

 ジョブ 剣士

 HP 207/207 MP 176/176

筋力 219 知力 185 瞬発力 276 精神力 198

オリジナルアビリティ 精神統一

アビリティ 剣術【10】→刀術【6】 威圧【5】 体術【10】→体さばき【4】 忍び歩き【8】 ダメージ軽減【10】→ダメージ減少【3】 不屈の心【10】(MAX) 精神汚濁耐性【2】


「ふむぅ……レベルの割にはステータスが高いけれどもなぁ……。筋力219じゃあな。」

「………よく……そんなステータスで………リュートと……打ち合えたな………。」


 茜のステータスを覗きこみながら二人は言う。

 リュートはしばらくなにか考えてから、口を開く。


「よし、アレクに聞こう。」

「………何が……よし……?」


 クルートが訳がわからないという表情で呟いた。


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白のの「スヤァ………」

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