第74話 序盤の町(推奨レベル75)

 町についた私は、とりあえず、冒険者ギルドへ。


 カウンターで何やら書類を書いている受付の職員さんに、声をかける。


「すいません。この町に初めて来た者なのですが、女性が安心して宿泊できて、値段の安めな宿ってありますか?」

「ん?ああ、それなら、南門の近くにある『小川のせせらぎ亭』が良いわよ。」


 黒髪青目のクールなお姉さん受付が、優しく答えてくれた。嬉しいね。

 ついでとばかりに、私は質問する。


「この辺りに図書館はありますか?」

「ええ。あるわ。ここよりも西に、ドラゴンにまたがった男性の銅像があるわ。その銅像の見える広場の一番大きな建物が図書館よ。」

「ありがとうございました。」


 私がお礼を言って、受付カウンターから離れる。


 よし、『小川のせせらぎ亭』で宿を確保してから、図書館に行って『月の砂漠』へ行く方法を調べよう。


 私は、少々明るい気分で南門へ向かおう……として、ギルドに戻る。


「すいません、南門って、どこにありますか?」


 微妙に受付のお姉さんに笑われた。


 ◇◆◇


 三人組のうち一人、あごひげの濃い男が舌打ちをして吐き捨てるように言う。


「くそっ!!右手がまだしびれていやがる!」


 足名から銀貨を奪った三人組の盗賊は、いまだに痺れる腕を必死に振るっていた。


 麻痺薬の効果時間は、たったの20秒だが、それは、20秒、ということだ。まともに洗い流さねば、違和感はかなり長く残ってしまう。


 その点だけ考えれば、十分に理不尽な薬品である。


「くそっ、ついてねえな。」


 あごひげの濃い男が吐き捨てるように言った、その時。


「ああ。お前ら本当にツイていないと思うぞ。心のそこから、な。」


 三人組の背後から、低い声が聞こえてきた。

 三人組は慌てて振り替えるが、もう遅い。


 ごきゅり、という、生々しい音が三回後を引き、そのうちなにも聞こえなくなる。


 拳に魔法付与の施された包帯を巻き付け、フードを深く被った男は、頭蓋を砕いた三人の男を掴むと、次の町へと引きずっていく。


 体をおおうようなローブごしでも、男がそれなりの強者であることが理解できるような、鍛えぬかれた体躯。 袖からちらりと見える褐色の腕。


_______こいつら、確か賞金首だったな。旅費の足しになるといいが。


 金色の眼を妖しく煌めかせながら、フードを被った男は次の町、カナンへと向かう。

 地平線に沈みかけた太陽が、オレンジ色の光をあたりに撒き散らしていた。


_______________________________________________________________


 出したかったキャラクターその2の登場です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る