第36話 閑話 答え合わせと黒魔法使い

「ああ、貴方ね。こんな夜更けに何のようかしら?」


 ノックの音を聴いた佐藤は、ロキに扉を開けさせ、○○を部屋へと招き入れる。

 ○○は、佐藤の部屋を一別すると、口を開く。


「答え合わせを、しに来た。」

「そう。貴方で三人目よ。」

「……俺の前に来た二人は?」


 その質問にはロキが答えた。


『加藤と茜だ。』

「へえ、加藤は勘が良いからわかるが、嶋崎か。」


 感心したような声を出す○○に、佐藤は告げる。


「多分、オリジナルアビリティの[精神統一]の効果だと思うわ。麻痺にも耐えていたようだし。」

「あー、なるほど?効果のわからないアビリティだとは思っていたが……」

「さて、答え合わせは?」


 佐藤の言葉に話がそれたと軽く謝ると、○○は口を開く。


「支給品の差別の話だ。ぶっちゃけ、それに関しては足名が気がつくまでは俺も知らなかった。……っていうか、予想はできたが、本当にやるとは思っていなかったな。」

「それには同意ね。」


 佐藤は首を小さく降って肯定する。


『差別なんざしてもバレたら面倒なだけだからな。やったところでたいした意味も旨味もねェ。俺様ですら何を考えてやったか分かんねェんだよな。』


 ロキが二人に同意するように呟く。

 ○○はそれにたいして答える。


「小林兄弟に頼んでチェックしてもらったところ、配られるはずだった支給品を着服しているやつがいた。それが、宰相と国王だ。」

「で?○○さんは国王か宰相、もしくはその両方が差別待遇をしていると思ったの?」


 佐藤さんは、○○を試すように質問する。

 ○○は苦笑いで首を横にふった。


「半分あっていて、半分違うな。国王と宰相が着服したのは最初に配られた支給品のみだ。ダンジョン探索の時は別の人物がやった。」

「理由は?」

「これも小林兄弟の情報のお陰だな。『奴隷の首輪』だったか?あれは、28あったんだろ?つまり、ダンジョンで殺す予定だったのは、の二人だけ。」

「なるほど?でも、結局、襲撃はあの皆を巻き込む一件だけだったわよ?」


 首をかしげる佐藤に、○○は少しだけ声を出して笑ったあと、答える。


「二回襲撃されかけていたぞ?一回目は魔物で、二回目は罠でな。」

「へぇ、そうだったの。」


 佐藤は感心したような声をだした。


「で、ダンジョン探索の時は誰が差別待遇をしていたの?」

「差別待遇だけじゃなく、もだけどな。半ば予想みたいなもんだが、___が犯人だろ?」

「……まあ、大方そうでしょうね。問題は犯人がその人であるという事実よりも、その人が使った魔法にあるのよねぇ。」


 佐藤は頭を抱えてロキの方をちらりとみる。ロキは「ケッ」と悪態をつく。


「ああ。あの薔薇の刺青、隷属魔法だろ?」

「ええ。そうね。寝ている間に隷属魔法を使われないかどうかヒヤヒヤしているわ。」

「まさか。あいつだったら、真っ先に朝井を隷属させるだろ。んで、他は殺す。」


 あり得るから嫌ねぇ、と呟く佐藤に、○○は違いない、と笑う。


「さて、次は私から貴方に対して聞かせてもらうわ。____何で、貴方はここから逃げようとしないのかしら?」


 鋭い目で質問する佐藤に、○○は半笑いで答える。


「実力がないからさ。」

「嘘ね。貴方の実力はこのクラスで一番と言えるわ。本気を出したら、朝井にだって勝てるのでしょう?」


「あいつには余裕で勝てるさ。でも、加藤と嶋崎は微妙だな。あいつらは技が上手い。」


 ○○は真面目な顔で答える。


「後は、前田先生が残っているからだ。俺は、前田先生に対して返しきれないほどの恩がある。先生だけは見捨てられない。」


「で、前田先生はクラスの人を見捨てられないから、貴方は皆を見捨てられない、と?」

「そうだな。」

「それで死にかけるのだったら笑えないわ。」


 佐藤は冷たくいい放つ。○○は佐藤からそっと目を反らす。


「先に宣言しておく。前田先生に何かあるようだったら、俺はクラスの人を全員見捨てたとしても、前田先生だけは助ける。それでもし俺の命がなくなったとしても、問題はないと思っている。」


「綺麗事を言うようでアレだけど、前田先生はそれを望んでいないと思うわ?」


「関係ないね。」


 ○○は言い切る。ふざけた様子は一ミリたりとも感じられない。本気なのだ。

 そんな様子の○○に、佐藤はため息をついて質問する。


「貴方、本当は黒魔法使いでしょ?」

「ああ。そうだな。いつ気がついた?」

「違和感を持ったのは、ステータスチェックの時ね。一体なんなのよ、ジョブ『魔法使い』って。全属性を使えたりするのなら、ジョブは私や先生みたく、『魔術師』よ。」

「ああ、あの時はドジったな、とは思った。クリストさんが何も言ってこなくて本当に良かったよ。」


 あっけらかんと言う○○に、佐藤はさらに聞く。


「アビリティに隠蔽か詐称でもあるの?」

「ああ。俺が持っているアビリティには、【隠蔽】があるな。で、『黒魔法使い』の『黒』のところを隠蔽して、後はアビリティをチマチマ隠蔽した。」

「器用ね。」

「便利だぞ?【隠蔽】は。気配を消したり、姿を消すのにも使える。」


 佐藤は本棚から一冊の本を抜き取る。金や宝石で豪華絢爛(言い方を変えれば悪趣味)に装飾された一冊。


「これに、黒魔法使いに関する記述があったわ。____悪魔との取引をして、魔法を発動させるのですっけ?」

「ああ。俺はベリアルっていう悪魔と専属契約していてな。笑えないくらいぼったくってきやがる。」

『あー、ベリアルか。顔だけはいいよな。』


 ロキは顔をしかめてそう言う。

 ○○は口元にうっすらと笑みを浮かべて同意する。


「アリステラ教では悪魔がタブーだから、当然黒魔法使いもタブーなのよね。気を付けてね。」

「当然さ。」


 ○○は片手を上げると、佐藤の部屋から出ていった。佐藤はその背中をじっと見つめていた。

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