第124話 仲間が増えるよ、やったね!
「……どうする?」
私がそう聞くと、シンは小さく首を振って渋い顔をする。
「とりあえず、さっさとここから離れるぞ。こいつを殺そうとしていた奴はまだ寝ているだろうが、俺たちの追手が来ないとも限らない。」
シンはそう言うと、デリットさんをそっと地面に置いた。丁寧だな、おい。
私は、頭を抱える。
「うっへぇ……いろいろ起こりすぎてて意味が分からなくなってきたわ。デリットさん、歩ける?」
「あ、はい。」
デリットさんは力なくそう答えると、うつむいていた顔を上げ、立ち上がる。目元は赤く腫れ、どうやら泣いていたらしいことが分かった。……あのあと、何があったのだろうか。原因の一端が私にあるため、多少気まずい気分になる。
ちょっとだけ迷ったが、私はデリットさんに声をかける。
「とりあえず、一緒にここから離れない?」
「……え?」
意味が分からないという表情をするデリットさんに、シンはぶっきらぼうに言う。
「一応、お前には
「テントも壊れていたから一つしかないけど、よかったらついてきてよ。もちろん、目的地がほかにあるのだったら、一緒に来なくてもいいけど。」
「いや、何で……⁈」
そう聞くデリットさんに、私たちは一瞬だけ顔を合わせ、ほぼ同時に答える。
「いやだって、申し訳ないし」「良心が痛んだ。」
「理由がばらばらなのに、ほぼ同じですね……同情でしたら、していただかなくて結構です。私は、私の意志でミハイ様の決定に逆らいました。」
デリットさんはそう言うと、深くため息をつく。だが、そんなデリットさんにシンは常識をもってして諭した。
「装備準備なしで放り出せるほど俺たちは鬼じゃあない。せめて、隣町までは送らせろ。」
「そうだよ、今のデリットさん、文字どうり身一つじゃない! 同じ女性として、そんなの放っておけないよ!」
「じょ……せい?」
「おいこら。聞いたことのあることを言うんじゃない、シン!」
私の言葉を聞いて、きょとんとした表情で冗談を言うシンに、私は思わず突っ込む。普通に失礼だからな、それ!
そんな私たちのやり取りをみて、デリットさんは一瞬だけポカンとした表情を浮かべた後、口を開いた。
「いいのですか?」
私は、その問いに対し、間髪入れずに答えた。
「当然。一緒に行こうよ。一応、私たちの目的地は、商人の国。私は冒険者のシロ。隣にいるシンが私の護衛で、わけ合って旅をしている。」
「……そう。私は、元神官のデリット。ついさっき破門されたわ。」
「俺は冒険者のシンだ。事情があって、ジャックと名乗っている。」
「……事情がありすぎるメンツが勢ぞろいって感じだね。昔話はしないスタイルでおーけー?」
私がそう聞くと、デリットは苦笑いをして頷く。
こうして、私たちの旅に、新たな仲間が加わった。
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