第41話 教えて!クリストさん!
「ハマノ様、また間違えています。この人は、リンゴを10個買い、そのあと2個食べ、孤児院に5個寄付しています。なので、残りは3個です。」
「あああああ!!こいつ、何で二個もリンゴを食ってんだよ!!一個食べたらそれで十分じゃん!」
「算数の問題だから、仕方がないでしょ。」
発狂する
さて、今はクリストさんによる常識講義の時間だ。文章の読みについては散々図書室に
ただ、強いて言うならば書きが微妙に心配なので、そこはもう少し勉強するしかない。
「あ、そうだ、クリストさん、国外のことについて教えてもらえますか?」
スペルを書く手を止めて、私はクリストさんに質問する。
図書室で読んだ本に外国の事が書いてあったので、気になっていたのだ。
「四日前の講義で少しだけ触れましたが、その時の基礎知識は覚えていますか?」
「あ、はい。今、私たちのいる国、『勇者の国』は、北に海があり、東に『賢者の国』、西に『戦士の国』、南に『商人の国』、北の端に『魔大陸』が面しているのですよね?」
「はい、そうです。よく覚えましたね。」
私が答えると、クリストさんは笑顔でそう言った。小説でもよく出てくる地名だ。忘れるわけがない。
クリストさんは黒板(のようなもの)に大雑把な地形を描いていく。
「前の講義で説明した通り、魔族の住む魔大陸は、実は別の大陸です。子供でも泳いで渡れるくらいの距離に位置する大陸なので、実質くっついていると表現しても構わないでしょう。」
クリストさんは、簡単な地図を指差してそう言う。
「東は恵まれた気候と肥沃な土地で、農業が盛んです。西は鉱山が豊富で、良質な武器や防具を生産しています。南は暑さが厳しく大変な環境ですが、そこでしか取れない希少な魔法金属があり、商業が盛んです。」
「希少な魔法金属!!」
「武器!!」
男子がキラキラとした目で地図を見つめる。
クリストは一つ咳き込むと、話をつづける。
「さて、北の魔大陸は、雪と氷に覆われた大地とされています。強力な魔物が多数存在し、危険きわまりない土地です。では、『勇者の国』の特徴的な場所を説明していきましょう。まずは、『戦士の国』との国境近くにある大樹林、『
クリストさんはそう言い、黒板に印をつけていく。かなり広い面積が
「次は、『商人の国』の国境付近、『月の砂漠』です。ここは、地下水が豊富でオアシスが多く、沢山の市場が開かれています。また、星や月が美しく見えることで有名で、観光名所としても知られています。」
南の国境付近に大きく楕円を描く。大雑把だが、この辺りが月の砂漠ということだろう。
女子がその話を聞いて、うっとりとそのようすを想像する。この世界の小説では、そこでプロポーズをするシーンが沢山あるものね。
「次は、王都付近の『ダンジョン地帯』。この国には、大小すべてのダンジョンを合わせると、千とも三千とも言えるような数のダンジョンが存在しています。そんなダンジョンのうち、約7割がここ王都付近に密集しています。」
最近行ったダンジョンも、その一部です。クリストさんはそう言う。
「最後は、『賢者の国』との国境付近にある、『叡知の斜塔』。いつの時代に作られたのかはっきりとしない、天をつくような高さの建物です。ダンジョンではないかとも噂されています。」
クリストさんは、東の国境近くに斜めの建物の絵を描く。
「これが大まかな国の説明です。詳しいことは、また明日の講義で説明します。」
そんなこんなで、今日の講義は終わった。
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