第38話 鬼(教官)の体調不良
「いやー、斬新な目覚めだったわー。」
「いや、あれはののじゃなかったら洒落にならないって。」
「私だったら洒落になるのか。」
下らないやりとりをしつつ、私とあかねちゃんは朝食を頬張る。フルーツうめぇ。
そんな様子の私に、葵ちゃんが渋い顔をして聞いてくる。
「でも、実際、何があったのかしらね。」
「悪魔云々言っていたけれども、悪魔と契約したら他人を殺すことができるの?」
私のその疑問に、ロキが答えた。
『まあ、出来ねぇことはねぇ。
「えっ、教官、そんなに簡単に死ぬの?」
『……わりぃ、前言撤回だ。アルフレッドについては
佐藤さんはそれを聞いて、「ふーん」と小さく言う。
「ってことは、今日は訓練なし……!!」
私の喜びを、宮藤くんが容易に打ち砕いた。
「いや、あるぞ。副隊長が指揮をとるらしい。」
「ちくせう!!」
ついでに、こっそりと宮藤くんに質問する。
「……副隊長って、どんな人だっけ?」
宮藤くんはそっと小さな声で答えた。
「……わかんね。」
大きなベッドに寝転んでいたアルフレッドが、青い顔をドアの方へと向ける。
部屋に入ってきたのは、副隊長であるヴァイス。見舞いのため、鎧は着ておらず、スッキリとシンプルな服装をしていた。
「……おお、ヴァイスか。今日の訓練はもう終わったのか?………………………いや、おいまて。その荷物、どうした!!」
入ってきたヴァイスの両手には、大量の品物が抱えられている。
仏頂面でアルフレッドの部屋へと入ってきたヴァイスは、大量の品物をサイドテーブルの上に置く。
どすりと、圧倒的な質量を伴う音がサイドテーブルの上に響く。
「勇者たちからの見舞いだ。」
「……何で知っているんだ?教えないように指示したよな?」
アルフレッドは眉をひそめ、ヴァイスに聞く。
ヴァイスは短く答えた。
「あの占いをそのまま信じた愚か者がいたらしい。一応、俺がしばいといた。」
「……おいおい、何の冗談だ?」
「事実だ。」
ヴァイスは冷静にそう言う。
アルフレッドは目を見開いて、頭を押さえた。
「後でアシナに謝罪しないとな……。あと、馬鹿を仕出かしたのは一体何処のどいつだ。」
「ルークとフィーゴだ。」
「おいおい、あの犬猿の仲の二人か?」
「ああ。心配していたらしいな。お前は殺しても死なそうなのにな。」
「失礼なことを言うじゃないか、ヴァイス。」
軽口をはきながら、アルフレッドはサイドテーブルに目を向ける。
山のように積まれた品物は、花や菓子、本、果てには石など、かなり多岐にわたっていた。
アルフレッドはそのうちひとつをつまみ上げる。
それは、五枚の薄紅色の小さな花弁をつけた花をたくさん咲かせた小枝だった。
「見たこともない花だな。なんだこれ。」
「うーん、勇者たちはサクラと呼んでいたが……。異世界の花の木の枝らしい。」
「ふーん。よく知らんが、ぼんやりとした花だな。」
アルフレッドは桜の枝を花瓶に活けると、次の品物をつまんだ。
木の箱の中に入った、独特な臭いのするしわしわの木の実。
「何だ、これ。」
「ウメボシというらしい。風邪をひいたときに食べると良いと言っていたが……。」
「食べ物なのか、これ。まあ、後で食べよう。」
梅干しの入った木箱を、サイドテーブルの引き出しのなかにしまいこむと、次の品物をつまんだ。
それは、だいたい五センチくらいの楕円形の塊。
「……石?」
「……ああ。ただの小石だな。」
「……とりあえず、もらっておくか。」
アルフレッドは石を花瓶の隣に置いておく。
次の品物をつまんだ。
それは、無色透明の液体の封じ込められた小瓶。
「これは?」
「ああ、アシナとアオイからの見舞いだな。軽度の呪いに効く薬だと。」
「最初にこれを出せよ!」
アルフレッドは瓶の蓋をあけて、中身を煽る。
「……味がない。」
「不味いよりかは良いだろ。」
ヴァイスはそう言うと、サイドテーブルの品物を漁り出す。
二人は晩御飯近くまで品物をみて楽しんだ。
なお、呪いは翌日すっかり治っていた。
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【対呪の石】
ただの石に、呪いを弾く効果を付与した代物。軽度の呪いであれば、対呪の範囲内(石から半径二メートル程度)に居れば、半日ほどで治る。
所持することで呪いに耐性がつく。
作成者 宮藤 創平、本田 まりん
実は、小石が一番すごかったりする。
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