第78話 あやしい冒険者(強め)

 吹っ飛ぶ冒険者。口をポカーンと開けてそれを見守る私と残り二人の冒険者たち。


 どんがらがっしゃん!!


 冗談か何かのように吹っ飛んだ冒険者は、轟音と共に木の床と濃厚なキスをした。


 ………どうしてこうなった……?


 私が現実逃避をしていると、ローブ姿の男性が口を開いた。


「俺には時間がない。面接が終わったのならさっさと帰れ。」


 低く冷たい声が冒険者たちに浴びせられる。


「へっ?あっ、は、はいぃ!!」


 二人の冒険者たちは、そそくさと床の上で伸びていた一人の不運な冒険者を引きずり、部屋から出ていった。


 とりあえず、私は頭を下げて口をあける。


「すいません、ありがとうございました。」


 ローブ姿の男性は、意味がわからないという表情をして口を開く。


「あ?そうか。とりあえず、面接を受けさせてもらえないか?」

「ええ。構いませんよ。まず、あなたのお名前を教えてください。」




 その後。二三質問したあと、面接は終わった。


 ローブ姿の男性は、Cランク冒険者の『ジャック』と名乗った。また、被ったフードは一度もはずさなかった。体を覆い隠すようなローブの下から覗けたのは、整った顔に金の瞳と、褐色の肌。


 怪しさを体現したような存在であったが、強者もさであるのは確実だ。あと、常識もそれなりにあるらしい。……いきなり人を殴ったことを抜いて。



………どうしよう。めっちゃ気になる。すっごく気になる。


 『ジャック』さんを雇うことに、私のメリットはほぼない。パーティーふくすうで依頼をしたのだが、彼はソロぼっちの冒険者だ。いかに実力があろうと、ソロぼっちだと夜営や襲撃でかなり困ることになるはずだ。多数の暴力とはそこまで恐ろしい。


 でも、『好奇心猫を殺す』って、こういうことなのかな。『ジャック』さんを雇いたい。


 少々迷ったあと、私はギルドの受付の職員さんに声をかける。


「すいません、護衛の依頼の件なのですが………」



 三日後。私とジャックさんはカナンを離れた。

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