第77話 さて、面接のお時間です。

 ギルドに依頼を出してから4日。今日は護衛パーティーの面接の日だ。ちょっとだけ身なりを整えてから、私は冒険者ギルドの会議室の扉を開ける。


 まだ誰もいない会議室には、木のテーブルと椅子が何十脚かがぽつんと置いてある。とりあえず、面接をするっぽい形に椅子を並べておくか。


「このテーブル、凄く丈夫だな。」


 少し重い木のテーブルを動かしながら、私は呟く。動かせなくもない重さに感じられるのは、ステータスの恩恵もあるだろう。


 この三日間は、ゴブリン退治と薬草採取でお金稼ぎをして、それなりにレベルも上がった。


名前

種族    レベル 39(2up)

ジョブ 薬師

HP 220(10up)/220 MP 222(12up)/185

筋力 210(10up) 知力 220(12up) 瞬発力 218(11up) 精神力 228(13up)

アビリティ

生成(薬品)【9】(1up)  薬物知識【8】(1up) 植物知識【4】(2up) 精神汚濁耐性【5】(1up) MP軽減【5】(1up) 洗濯【4】(1up) 清掃【4】(1up)

称号

【赦された者】


 筋力もそれなりになっている。

 一応ゴブリン3匹くらいならば、簡単に倒せるようになっている。……囲まれたら辛いが。


「そろそろ時間だ。座っておくか。」




 ……結論から言おう。面接は酷いものだった。


 遅刻は当たり前、依頼人が子供だとわかるなり大きな態度をとる、怒鳴る、脅しだす。

 いや、そこまでひどかったのは数人か。


 過半数の冒険者パーティーは、私のことを心配してきた。うん。わかるよ、子供だもんね。


 採用しようかと悩んでいるのは、3組。

 まあ、あと5組のパーティーがある。それを見たあと、ギルドの受付の人と相談して決めよう。


 ……と思っていた私がバカでした。


「いいから金出せや!せっかく来てやったんだぞ!?」

「ですから、これは面接だと……」

「来てやったって言ってんだろ!!」


 あと一つのパーティーで面接が終わるというこの時。一番最悪のパターンのパーティーとぶち当たった。


 遅刻、大きな態度、怒鳴る、脅す。彼らは相手が依頼人だとわかっているのだろうか。


 _______武器を抜いたら即座にギルドの人に連絡!


 ひきつりそうな顔を必死で押さえ、冒険者三人と向き合う。


「すいません。もう面接は終了しましたので、お帰りください。」

「だから、金払えや!」


 心がおれそうだ。話が通じない人との会話って、こんな感じなのか………。


 そうこうしているうちに、扉がノックされた。どうやら最後のパーティーが来たらしい。


「……おい、まだ終わっていないのか?」


 戸を開けて入ってきたのは、一人の男性。ローブを深く被っている。武器は特に身に付けていないが、拳に真っ白な包帯が巻いてある。


 長身でそれなりに鍛えているのか、動きもしなやかでローブごしからでも鋼のような筋肉が伺える。


 突然の侵入者に、先に面接(?)をしていた男たちが怒りの声を上げる。


「んだよ、てめえ!」

「どっか行けや!邪魔なんだよ!」

「す、すいません!少々お待ちください!」


 私があわててそう言うと、ローブ姿の男性は黙って会議室のなかに入ると、おもむろに拳から包帯を外す。


 訳がわからず呆然と見守る私をよそに、包帯をはずし終えたローブ姿の男性は、ゆっくりと冒険者たちに近づいていき……


 ドゴガッ


「はっ?」

「えっ?」

「ひぃっ!?」


 目の前で冒険者一人を殴り飛ばして見せた。

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