第16話 閑話 ロキ

 俺様はロキ。魔界で侯爵位と領地を持つ大悪魔だ。


 だいたい三千年くらい前に人間界にきて、適当に遊んでたのまではいいんだが、ドジって本の中に封印されちまった。


 腸が煮えくり返るような思いだったな。ただがた人間ごときに俺様が封印されるなんて。


 この糞みたいな本から無傷で出るには、本を読んだやつを引きずり込んで、そいつの命を鍵にして出る他ない。


 まあ、力の九割を使って無理やり外に出る方法もあるが、そんなことをしてしまっては俺様が消滅してしまう可能性もある。やらない方がいいだろう。

 

 ほぼ欠点なしの奴の唯一のミスは、俺様をこの世から消滅させなかったことだな。人間界に戻ったら奴のいた国を滅ぼして奴の家系の人間を残らず生け贄にしてやろう。


 ……そう思っていたのだが。

 なかなか俺様の封印された本を読むやつがいない。

 誰も来ない三千年は本気で暇だった。


 かなり体が鈍ってきたころ、そいつらは現れた。


 髪の毛の長い眼鏡をかけたガキに、貧相な体の平凡な顔のガキ。

 一瞬だけ人間が来たことを喜んだ俺様がバカだった。


『ありがとうなァ、人間!!お前らのお陰でこの糞みてえな空間からオサラバ出来るぜェ!!』


 そう言えばビビるもんだと思っていたが、二人に表情の起伏はない。怖すぎて固まったのか?

 まあ、【上位悪魔の威圧】のアビリティが常時発動しているからな。当たり前か。


『俺様の優しさだ。3秒くれてやる。遺言でも言ってなァ!!はーい、さー』


 その瞬間。凄まじい威力の魔法が俺様に炸裂した。


 何やってんだ眼鏡のチビガキ。イクスプロージョンは対人魔法じゃねえ。範囲攻撃用の魔法だ。一人のためにそんな魔法使うんじゃねえよ。

 和気あいあいとしてんじゃねえよ。モブ女。そこは恐れおののいて命乞いするとこだよ。


 ふつふつと沸いてくる怒りのまま俺様は【威圧】を使用しつつ怒鳴る。


『最後まで聞けよォォォォォォオオ!!』

「あら、生きてたの」

『生きてるわァ!!ただがた人間の攻撃で消滅する分けねえだろォ!!』


 そもそも[火の化身]である俺様に火の魔法は効かない。先程のイクスプロージョンも、体が爆風で少し浮きそうになったくらいだ。


 あれだけ強烈な火魔法を使えるということは、眼鏡の女はかなり上位の火魔法使いなのだろう。残念だったな。最強だと思っていた火魔法が効かなくて!!


 後ろにいる貧相な女は[生成]を使っていた。錬金術師かなにかだろう。警戒する必要はないな。


 さあ、命乞いをしろ!!泣け!喚け!


「いやー、MPを気にせず薬品を次々と作れるなんて、最高の環境だね!」

「私も、回りの地形を変えちゃうような魔法が試せるし、結構いいとこかもね。」


『マイペースかお前らァ!!人の話は聞けよ!この空間では光魔法が使えないこととか!俺様の自己紹介とかァ!』


「悪魔って、人間じゃないんじゃなかった?クリストさんがそんなことを言っていたよね。はい、HPポーション。」

「【フレア】!!たしかに、そんな感じのことを言っていたかも。聖書にも書いてあったわ。」 


 ああ。もう、こいつらダメだ。さっさと殺して外へ出よう。


 そう思っていたのだが。


「HCl、塩酸ね。」

「【ダイダルウェイブ】」


 貧相な女もうざったかったが、眼鏡の女は鬼だった。


 仲間を巻き込んでの水属性の大魔法。

 薄れそうになった脳裏に浮かんだのは、俺様を封印したガキ。


______よく思い出せば、こいつらと雰囲気が似ていたな………


 瀕死の俺様に情け容赦なくウォーターボールを放ち、完全に俺様の力を奪う。



 次に気がついたときには、眼鏡の女に従属魔法をかけられた後だった。


 力を奪われたあげく、残り少ない力すら封印から出るために使われる。

 腸が煮えくり返るような、という表現では足りないような屈辱だった。


 まあ、いい。


 大悪魔たる俺様を従属させるには膨大な量の魔力が必要になる。

 その魔力を賄いきれなくなった瞬間が女の最後だ。


 生きていたことを後悔させるほどの苦痛を与えた上で四肢を切り落として飼い殺してやる。


……そう誓ったは良いのだが。


 図書館に通いつめる女は、1日一回、実験と称して訓練場の地形を変えるほどの大魔法を使用して、それを土魔法を使って直す。


 本人いわく、『実験だから、あまりMPを使っていない』らしい。


 大魔法は戦争の決め手になり得る魔法なのだが。二、三発続けざまにぶっぱなすような魔法ではないのだが。


『あのー、ご主人サマ?アンタ、どんな魔力量をしているんデスか?』


 そう聞いてみたところ、ご主人サマはステータスを見せてくれた。


名前 佐藤 夢子

種族 人間  レベル 1

ジョブ 魔術師

HP 30 MP 304 筋力 10 知力 278 瞬発力23 精神力 265

オリジナルアビリティ 知識は力なり

アビリティ 火魔法【10】→火魔法(上位)【9】 水魔法【10】→水魔法(上級)【3】 雷魔法【10】→雷魔法(上位)【2】 風魔法【10】→風魔法(上位)【2】 土魔法【10】→土魔法(上位)【5】闇魔法【10】→闇魔法(上位)【1】 光魔法【10】→光魔法(上位)【1】 精神汚濁耐性【8】 不眠【5】 MP軽減【6】



 ……種族が人間であることに驚くしかなかった。


 そして、悟った。

 あ、無理だ。と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます